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安逸
「安逸〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
安逸の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「浜菊」より 著者:伊藤左千夫
誰にも彼にも非常人的精進行為を続けて行けと望むは無理である。子を作り、財を貯え、
安逸なる一町民となるも、また人生の理想であると見られぬことはない。普通な人間の親....
「冬の日」より 著者:梶井基次郎
かそれに気がついてみると、栄養や安静が彼に浸潤した、美食に対する嗜好《しこう》や
安逸や怯懦《きょうだ》は、彼から生きていこうとする意志をだんだんに持ち去っていた....
「蒼穹」より 著者:梶井基次郎
っている野山には静かな懶《ものう》さばかりが感じられた。そして雲はなにかそうした
安逸の非運を悲しんでいるかのように思われるのだった。 私は眼を溪《たに》の方の....
「三浦右衛門の最後」より 著者:菊池寛
実現性を帯びている。彼はどう考えても死ぬということが嫌であった。彼の過去の生活は
安逸と愉悦とにみちていた。彼はこの世の中ほど面白い所がほかにあるとは思えなかった....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
のだろう。 世の中には、ことに君が少年時代を過ごした都会という所には、毎日毎日
安逸な生を食傷するほどむさぼって一生夢のように送っている人もある。都会とは言うま....
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
なら、血を絞られたっていいじゃないかとな」 「そうともそうとも、その通りだ」 「
安逸なる者よ寝床から起きよ。飽食の女よ口を洗え。慈悲に縋れ仏陀の慈悲に」 尼は....
「黄鳥の嘆き」より 著者:甲賀三郎
されることは、むしろ恐ろしいのだ。 けれども、僕はいつまでも都合のいゝ世界で、
安逸を貪っていることは許されなかった。僕はいつまでも卑怯である訳には行かなかった....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
われ等に取りて好適な日とは言われない。精神肉体がその緊張を失えば、その反動として
安逸性が加倍し、われ等として、之を使役して新規の現象の作製を試むる事は、大いに憚....
「女性の諸問題」より 著者:倉田百三
は妙智のひらける縁がない。 それが独りよがりの傲慢になってしまうか、中途半端な
安逸に満足してしまうかである。 処女は処女としての憧憬と悩みのままに、妻や、母....
「潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
ヤチックの海の何処にだっても、砲弾の殻一つ落ちなかったのではございませんか。その
安逸が――いいえ蟄居とでも申しましょうか。それが、貴方に海の憬れを駆り立て、硝烟....
「青春の息の痕」より 著者:倉田百三
用意をするためにしばらく暇を、愛する人々にこいたいと思います。なにとぞ私が自らの
安逸のために煩わしき世よりのがるるものと思って下さいますな。私はトマスより違った....
「エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
に導いたほどであった。 ふしぎの国――愛らしく、野蛮で、神話的な国土は、物憂い
安逸に、彼を誘った。裸を包むマント。顔面にまで垂れかかる長い髪たば。突撃のときの....
「西航日録」より 著者:井上円了
汽車に乗り換え、夜一時発車。汽車はこれを他邦のものに比するに一層大にして、意外に
安逸なるを覚ゆ。しかして、その走ることはなはだ緩慢なり。ゆえに余、一句をよみて、....
「民衆芸術の精神」より 著者:小川未明
達して、生産の豊富から、物資の潤沢をのみ夢むような輩は、尚お、心にブルジョアの、
安逸と怠惰の念が抜けきらないからです。私達、真の無産者は、喜びを共にし、苦しみを....
「釜沢行」より 著者:木暮理太郎
うている森林の一端に足を蹈み入れた時は、うっとりと気も遠くなる程であった。こんな
安逸が何時までも許されようとは元より期していなかったが、八時五分、前面に展開した....