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「宛然〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

宛然の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
毛利先生」より 著者:芥川竜之介
たからであろうか。現在この夜のカッフェで給仕と卓《テエブル》を分っている先生は、宛然《えんぜん》として昔、あの西日《にしび》もささない教室で読本を教えていた先生....
失楽園殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
たず、幹枝に大腹水症を発せしめたり。六尺余りに肥大せる腹を抱えて、全身は枯痩し、宛然草紙にある餓鬼の姿よりなき幹枝を見れば、ありし日の俤何処ぞやと嘆ずるのほかな....
星あかり」より 著者:泉鏡花
さきに触れたので、昼間は鉄の鍋で煮上げたような砂が、皆ずぶずぶに濡れて、冷こく、宛然網の下を、水が潜って寄せ来るよう、砂地に立ってても身体が揺ぎそうに思われて、....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
次の創世記めいた奇文に至ると、その二つの文章が、聯関している所は勿論、すべてが、宛然霧に包まれたような観を呈しているのだった。それから、押鐘博士に遺言書の開封を....
四日間」より 著者:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ
き、脚は水腫に脹上り、脚絆の合目からぶよぶよの肉が大きく食出し、全身むくみ上って宛然小牛のよう。今日一日太陽に晒されたら、これがまア如何なる事ぞ? こう寄添って....
春昼」より 著者:泉鏡花
にあぶなッかしい形でな。 渾名を一厘土器と申すでござる。天窓の真中の兀工合が、宛然ですて――川端の一厘土器――これが爾時も釣っていました。 庵室の客人が、唯....
七宝の柱」より 著者:泉鏡花
て待っていた。まだ葉ばかりの菖蒲杜若が隈々に自然と伸びて、荒れたこの広い境内は、宛然沼の乾いたのに似ていた。 別に門らしいものもない。 此処から中尊寺へ行く....
後光殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
人物が一人もいない始末だが、その代り、どれもこれも、一目で強烈な印象をうける――宛然仮面舞踏会なんだよ。然し、そう云う連中が、神経病患者の行列ではなくて、真実芝....
「菊池寛全集」の序」より 著者:芥川竜之介
池は Parnassus に住む神々ではないかも知れぬ。が、その力量は風貌と共に宛然 Pelion に住む巨人のものである。 が、容赦のないリアリズムを用い尽....
月世界跋渉記」より 著者:江見水蔭
い悲惨な有様だ。 自分らの這入っていた一室はどうにか壊れずにいるが、部屋の中は宛然玩具箱を引繰り返したように、種々の道具が何一つとして正しく位置を保っているの....
飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
には何等負傷の痕も無く、其顔は依然として安らかに眠っていた。が、お杉の瞋れる顔は宛然の鬼女であった。加之も高い所から再三転げ落ちて、剣の如き岩石に撃れ劈かれたの....
西航日録」より 著者:井上円了
雲際に山影を認む。これアンナンの南端なり。ホンコン以来、日一日より炎威相加わり、宛然三伏を迎うるがごとし。ときどき惰気眠りを促しきたり、筆を執るにものうし。ただ....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
して行くのである。) 五月二十八日(日曜)、好晴。軽風暖を帯び、穏波碧を送る。宛然、春海の洋々たるがごとし。午前十時半、礼拝式あり。食堂に集まるもの百五十人、....
仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
ビルディングをはじめとして無数の高層建築は比較的狭き道路の両側に建ち並び、道路は宛然、谷底のごとく、太陽の直射は一日ほんの僅かな瞬間だけ恵まれるのみであります。....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
する。山国の秋ほどすがすがしく澄みわたることはなかろう。山々峰々が碧瑠璃の虚空へ宛然定規など置いたように劃然と際立って聳えて見える。その一つ一つを選択するのであ....