宵月[語句情報] » 宵月

「宵月〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

宵月の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い：新字新仮名]
「宝蔵の短刀」より 著者:田中貢太郎
に掛けてある長い刀を執って、縁側に出て雨戸を開けた。微曇《うすぐもり》のした空に宵月が出てぼんやりした光が庭にあった。庭の中程と思う処へ十本ばかりの物干竿が転が....
「二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
ゃんは寂しそうだ。 土手の松へは夜鷹が来る。築土の森では木兎が鳴く。……折から宵月の頃であった。親雀は、可恐いものの目に触れないように、なるたけ、葉の暗い中に....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
に東都の春の濃やかなるを忍ぶとき、御身恋しの心は滲むがごとくに湧き出ずるなり。今宵月白し。花紅き籬のほとり、行人の声いと懐し。 大船で訣れるとき、訣れの言葉を....
「菎蒻本」より 著者:泉鏡花
のさえ、頃日の埃には、もの和かに視められる……じとじととした雲一面、星はなけれど宵月の、朧々の大路小路。辻には長唄の流しも聞えた。 この七の日は、番町の大銀杏....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
の時――心ありや、心なしや、この音色。 五 宇津木兵馬は、今宵月明に乗じて中房《なかぶさ》を出で、松本平の方へ歩みます。 どうして、特に月....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
、肩を曲げたなり手を腰に組んだまま、足をやや横ざまに左へ向けた。 「帰途のほどは宵月じゃ、ちらりとしたらお姿を見はずすまいぞや。かぶりものの中、気をつけさっしゃ....
「化鳥」より 著者:泉鏡花
、それでもない。 蛙が一斉に鳴きはじめる。森が暗くなって、山が見えなくなった。宵月の頃だったのに、曇ってたので、星も見えないで、陰々として一面にものの色が灰の....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
げ》のけむりが白く長くたなびくばかり――法恩寺橋のたもとに、宿なし犬が一匹、淡い宵月の面を望んで吠え立てていた。 ……櫛まきお藤、そも左膳を助けだしてどこへ伴....
「南蛮秘話森右近丸」より 著者:国枝史郎
へ入れるのも忙しく、後に続いて走り出た。 15 ここは五条の橋である。 今、宵月に照らされて、フラフラ歩いて来る人影がある。古道具買に身を※した、香具師の親....
「塩原多助一代記」より 著者:三遊亭円朝
ゝよ」 と云われ、多助は「はい」と云いながら、曳慣れたあおりました頃で、五日の宵月は木の間に傾きほのぐらく、庚申塚までは三町ばかり手前の所まで参りますと、馬は....
「四国遍路日記」より 著者:種田山頭火
そく暮れ早い山峡の第二夜が来た、今夜は瀬音が耳について、いつまでも睡れなかった。宵月、そして星空、うつくしかった。 “谿谷美” “善根宿” “野宿” 行乞しつつ....
「死剣と生縄」より 著者:江見水蔭
れた。 途方に暮れて竜次郎と小虎とは、再び元の渡し口まで帰った。もう夜に入って宵月が出て居った。 「皆此身の不覚からだ。此分では江戸へ帰ったとて、よしや師が健....
「早耳三次捕物聞書」より 著者:林不忘
浜のほうへ歩いて行く。この辺はもう人家もない。右手に薩州お蔵屋敷の森がこんもりと宵月《よいづき》に浮んでいた。 風が磯の香を運んで来る。行手に、もと船大工の仕....
「迷信解」より 著者:井上円了
読書し、精神大いに疲労を覚えしかば、しばらく休憩せんとて庭前を仰ぎ見るに、折しも宵月夜のころなれば、月もはや落ちて暗かりけるが、縁の端にだれとも知らず、白き物を....
「すみだ川」より 著者:永井荷風
前とは全く違った態度になって、極めて明瞭に浄瑠璃外題《じょうるりげだい》「梅柳中宵月《うめやなぎなかもよいづき》」、勤めまする役人……と読みはじめる。それを待構....