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「寄す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

寄すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或恋愛小説」より 著者:芥川竜之介
容易に陥らないのです。しかしある二月の晩、達雄は急にシュウベルトの「シルヴィアに寄する歌」を弾きはじめるのです。あの流れる炎《ほのお》のように情熱の籠《こも》っ....
猿蟹合戦」より 著者:芥川竜之介
戦ったが最後、蟹は必ず天下のために殺されることだけは事実である。語を天下の読者に寄す。君たちもたいてい蟹なんですよ。 (大正十二年二月)....
外科室」より 著者:泉鏡花
の墓地と所こそは変わりたれ、同一《おなじ》日に前後して相|逝《ゆ》けり。 語を寄す、天下の宗教家、渠ら二人は罪悪ありて、天に行くことを得ざるべきか。....
海異記」より 著者:泉鏡花
風のたよりにも艪の声にのみ耳を澄ませば、生憎待たぬ時鳥。鯨の冬の凄じさは、逆巻き寄する海の牙に、涙に氷る枕を砕いて、泣く児を揺るは暴風雨ならずや。 母は腕のな....
去年」より 著者:伊藤左千夫
え。元来人間は生きたい生きたいの悶躁でばかり動いている。そうしてどうかこうか生を寄するの地をつくっているものだ。ただ形骸なお存しているのに、精神早く死滅している....
天守物語」より 著者:泉鏡花
し。 しとやかに通り座につく。と、夫人と面を合すとともに、双方よりひたと褥の膝を寄す。 夫人 (親しげに微笑む)お亀様。 亀姫 お姉様、おなつかしい。 夫人 私....
南地心中」より 著者:泉鏡花
梢に、風の戦ぐ、と視めたのは、皆見世ものの立幟。 太鼓に、鉦に、ひしひしと、打寄する跫音の、遠巻きめいて、遥に淀川にも響くと聞きしは、誓文払いに出盛る人数。お....
開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
、生葱を刻んで捏ね、七色唐辛子を掻交ぜ、掻交ぜ、片襷で練上げた、東海の鯤鯨をも吸寄すべき、恐るべき、どろどろの膏薬の、おはぐろ溝へ、黄袋の唾をしたような異味を、....
多神教」より 著者:泉鏡花
。 女児二 こわいよう。 小児二 少しこわいなあ。 いい次ぎつつ、お沢の落葉を掻寄する間に、少しずつやや退る。 小児一 お正月かも知れないぜ。この山まで来たんだ....
春昼後刻」より 著者:泉鏡花
は、件の紫の傘を小楯に、土手へかけて悠然と朧に投げた、艶にして凄い緋の袴に、小波寄する微な響きさえ与えなかったにもかかわらず、こなたは一ツ胴震いをして、立直って....
瘠我慢の説」より 著者:石河幹明
き、これも必要なり彼れも入用なりとて兵器は勿論、被服帽子の類に至るまで仏国品を取寄するの約束を結びながら、その都度小栗には謀らずして直に老中の調印を求めたるに、....
誓之巻」より 著者:泉鏡花
見詰めいたり。 予が見て取りしを彼方にもしかと見き。ものいうごとき瞳の動き、引寄するように思われたれば、掻巻|刎ねのけて立ちて、進み寄りぬ。 近よれという色....
卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
い、荒磯の小屋に小父さんが一人居て、――(目こそ闇けれど)……どうとかして――(寄する波も聞ゆるは)……と言うと、舞台中ざあと音がしてね、庵へ波がしらが立つのが....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
にそいて進むを見る。船中無聊のあまり、喜望峰出航以来、毎日ただ白雲に対して客懐を寄するの意を述べたる七律を賦す。 未。 (阿南部の窮まる地を遊歴することに飽きた....
大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
徐々相近づくにぞ、手を濡らしつつ、風強き日の、十枚紙|鳶など手繰る如く、漸く引き寄す。 思の外、容易に近づくか知らと、喜ぶ時、船前五間許の処にて、がばがばと水....