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「寒空〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

寒空の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
。増上寺《ぞうじょうじ》前に来てから車を傭《やと》った。満月に近い月がもうだいぶ寒空《さむぞら》高くこうこうとかかっていた。 二人を迎えた竹柴館の女中は倉地を....
星座」より 著者:有島武郎
をかしげると、堅く腕を胸高に組合せて霜の花でもちらちら飛び交わしているかと冴えた寒空の下を、深く考えこみながら、南に向いてこつりこつりと歩いていった。 ....
東海道五十三次」より 著者:岡本かの子
た。私は 「作楽井さんは、この頃でも何処かを歩いてらっしゃるでしょうか、こういう寒空にも」 と言って、漂浪者の身の上を想ってみた。 それから二十年余り経つ。....
玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
ごぜん》にわが子を差し出すほどの準備がなかった。いかに磨かぬ珠だといっても、この寒空にむかって肌薄な萌黄地の小振袖一重で差し出すのは、自分の恥ばかりでない、貴人....
国貞えがく」より 著者:泉鏡花
見込んで嫁入《きて》がないッさ。ね、祖母《としより》が、孫と君の世話をして、この寒空《さむぞら》に水仕事だ。 因果な婆さんやないかい、と姉がいつでも言ってます....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
お目にかけます」と、半七は慰めるように云った。 「どうか宜しく願います。だんだん寒空には向って来ますし、火事早い江戸で半鐘騒ぎは気が気でありませんよ」と、家主は....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
自分にしきりに酒をすすめたが、こっちは飲めない口であるから堅く辞退した。おいおい寒空にむかって来るから移り替えの面倒を見てくれとお元から頻りに強請《せが》まれた....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
うに思ったが、まさかに手伝いに行ってやるわけにもゆかないので、これからだんだんに寒空にむかって、お雪の白い柔らかい手先に痛ましいひびの切れるのをむなしく眺めてい....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
のを商売のようにしている道楽者であった。去年の暮、あるところで彼は博奕に負けて、寒空に素っ裸にされようとするところへ、ちょうど多吉が行きあわせて、可哀そうだと思....
幽霊妻」より 著者:大阪圭吉
――黒々と湿った土の上に、斜めに突きさされた真新しい奥様の卒塔婆の前には、この寒空に派手な浴衣地の寝衣を着て、長い髪の毛を頭の上でチョコンと結んだ、一人の異様....
とむらい機関車」より 著者:大阪圭吉
えている親爺へ、言いました。 「小父さん。綺麗な花ですね。こんな綺麗な奴が、この寒空に出来るんですか?」 すると親爺は一寸顔を挙げて、 「出来ますとも。B町の....
寒の夜晴れ」より 著者:大阪圭吉
が、不意に転げ込んで来て、三四郎の留守宅に持上った兇事の報せを齎らして来た。私は寒空に冷水を浴びた思いで、それでもすぐにスキーをつけると、あわてふためいて美木と....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
。近いうちに雪かも知れませんよ」と、松吉は店へあがって炉のまえに坐った。 「この寒空に金魚を売ろうの、買おうのと、つまらねえ道楽をするから、いろいろの騒動が出来....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
うしてもこの女を見捨ててゆくわけには行かなかった。 「ほんとうに悪い洒落だ。この寒空につめてえ真似をするもんじゃあねえ。早く行かねえと、引き摺って行って、橋番に....
転機」より 著者:伊藤野枝
宜のないというわかり切ったことがむやみに心細くなりだした。それでもこの雪もよいの寒空に自分から進んで、山岡までも引っぱって出かけて来ておいて、まさかそのようなこ....