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寰
「寰〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
寰の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
、魔力の境《きょう》を窮《きわ》むるとき、桃源《とうげん》に骨を白うして、再び塵
寰《じんかん》に帰るを得ず。ただの夢ではない。糢糊《もこ》たる夢の大いなるうちに....
「忘れえぬ人々」より 著者:国木田独歩
はどこの田舎も同じことであるが、僕は荒涼たる阿蘇の草原から駆け下りて突然、この人
寰に投じた時ほど、これらの光景に搏たれたことはない。二人は疲れた足をひきずって、....
「残されたる江戸」より 著者:柴田流星
も女も噪ぐのが面白く、葭簀を境いにキャッキャッとの騒ぎ、街衢をはなれたこの小|仙
寰には遠慮も会釈もあったものではない。 滝の名所はここ王子なるを初めに、角筈の....
「銀座アルプス」より 著者:寺田寅彦
うな気がする。日常人事の交渉にくたびれ果てた人は、暇があったら、むしろ一刻でも人
寰を離れて、アルプスの尾根でも縦走するか、それとも山の湯に浸って少時の閑寂を味わ....
「十二支考」より 著者:南方熊楠
〉と特書せるを見ると、当時韓地にも牛馬を用いぬ所があったので、千年ほど前出来た『
寰宇記《かんうき》』に、琉球に羊と驢と馬なく、〈騎乗を知らず〉といえるもその頃そ....
「八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
は土の上で眠った。 二十年近い過去となった。その頃彼らは八ヶ嶽を出て、下界の塵
寰へ下りて来た。それは盗まれた彼らの宝――宗介天狗のご神体に着せた、黄金細工の甲....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
は相変らずの調子で、日本アルプスを後ろに、松本平を前に、月明の夜、天風に乗じて人
寰《じんかん》に下るような気取りで歩いて行きましたが、今度はさっぱり手ごたえがあ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
下山を致して参るつもりでございます。本来、目が見えませんから、山へ登りましても人
寰《じんかん》の展望をほしいままに致そうとの慾望もござりませず、山草、薬草の珍し....
「小春」より 著者:国木田独歩
に忙しく女子みな男子と共に働きいたり。山の麓に見ゆるは土河内村なり、谷迫りて一|
寰区をなしことさらに世と離れて立つかのごとく見ゆ、かつて山の頂より遠くこの村を望....
「自由人」より 著者:豊島与志雄
々を仰ぎ見、また霧の底の鳥の鳴き声に耳を傾けた。 意外な温い思いである。遠く人
寰を離れて、千五百メートルの寂寥な高所での、その温い思いは、天の逆鉾に纏わる伝説....
「女難」より 著者:国木田独歩
までがいかにも静かに、穏やかに見えて、彼の尺八の音の達く限り、そこに悠々たる一|
寰区が作られているように思われたのである。 自分は彼が吹き出づる一高一低、絶え....
「中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
れるであろう。 最後に私は、古書肆の店頭から殆ど姿を消してしまった本書を再び人
寰の裡へ呼びかえしてくれられた知友|角川源義さんの御厚意に、心からの御礼を申しあ....
「三国志」より 著者:吉川英治
いて高吟しだした。ひとりは、それに合わせて、箸で鉢をたたく。 漢皇剣をひっさげて
寰宇を清め 一たび強秦を定む四百|載 桓霊いまだ久しからず火徳|衰う 乱臣賊子|....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
と親しさとを以て之に接し得るのは、畢竟室堂の影が始終視界を離れない為であろう。人
寰との交渉を断続した筈の高い処に、尚お余り小さいながらも縮図されたる下界が存在し....