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就中
「就中〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
就中の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
の足りない時には巧みに両親の歓心を買い、翌月の小遣いを捲《ま》き上げようとした。
就中《なかんずく》彼に甘かった老年の母に媚《こ》びようとした。勿論《もちろん》彼....
「文放古」より 著者:芥川竜之介
の云ったように、わたしの「作家的完成を棒にふるほど懐疑的《かいぎてき》」である。
就中《なかんずく》わたし自身の愚には誰よりも一層《いっそう》懐疑的である。「芥川....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
いだ》、狡猾《こうかつ》そうな表情が浮んだ。
「おれの国の人間は、みんな焼くよ。
就中《なかんずく》おれなんぞは、――」
そこへ婆さんが勝手から、あつらえ物の蒲....
「湖南の扇」より 著者:芥川竜之介
っとこの支那人の誰であるかがわからなかった。けれども忽《たちま》ち彼の顔に、――
就中《なかんずく》彼の薄い眉毛《まゆげ》に旧友の一人を思い出した。
「やあ、君か....
「温泉だより」より 著者:芥川竜之介
だったと言うことです。
わたしはこの婆さんにいろいろの話を聞かせて貰いました。
就中《なかんずく》妙に気の毒だったのはいつも蜜柑《みかん》を食っていなければ手紙....
「寒さ」より 著者:芥川竜之介
にいずれも、幸福らしい顔をしていた。保吉はそれにも苛立《いらだ》たしさを感じた。
就中《なかんずく》海軍の将校たちの大声に何か話しているのは肉体的に不快だった。彼....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
花の一枝もない。四五人がちらほらと、式台へ出かかる中に、妙子が居た。 阿嬢は、
就中活溌に、大形の紅入友染の袂の端を、藤色の八ツ口から飜然と掉って、何を急いだか....
「絵本の春」より 著者:泉鏡花
巻いて――鼓の転がるように流れたのが、たちまち、紅の雫を挙げて、その並木の松の、
就中、山より高い、二三尺水を出た幹を、ひらひらと昇って、声するばかり、水に咽んだ....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
ねた好みに見えた。 しかし、袴は、精巧|平か、博多か、りゅうとして、皆見事で、
就中その脊の高い、顔の長い、色は青黒いようだけれども、目鼻立の、上品向きにのっぺ....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
この時、先生|愕然として頸をすくめた。 「あかぬ! 包囲攻撃じゃ、恐るべきだね。
就中、銑太郎などは、自分釣棹をねだって、貴郎が何です、と一言の下に叔母御に拒絶さ....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
な光景しか映りませぬが、私にはその外にまだいろいろの光景が見えるのでございます。
就中一|番目立つのは肉体の外に霊魂――つまりあなた方の仰っしゃる幽体が見えますこ....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
でも、之を吸収消化せずという事なく、常に渾身の努力を挙げて、その研究にかかった。
就中彼が畢生の心血を濺いだのは心霊問題で、之が為めには、如何なる犠牲をも払うこと....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
いつかペンを動かさずにいろいろのことを考えていた。妻のことを、子供たちのことを、
就中姉の夫のことを。…… 姉の夫は自殺する前に放火の嫌疑を蒙っていた。それもま....
「久保田万太郎氏」より 著者:芥川竜之介
を異にすれども、江戸っ児たる風采と江戸っ児たる気質とは略一途に出ずるものの如し。
就中後天的にも江戸っ児の称を曠うせざるものを我久保田万太郎君と為す。少くとも「の....
「本所両国」より 著者:芥川竜之介
転しているであろう。が、あのじめじめした猿江の墓地は未だに僕の記憶に残っている。
就中薄い水苔のついた小林平八郎の墓の前に曼珠沙華の赤々と咲いていた景色は明治時代....