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屈托
「屈托〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
屈托の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
り、座敷には蓬莱《ほうらい》が飾られたりしても、お蓮《れん》は独り長火鉢の前に、
屈托《くったく》らしい頬杖《ほおづえ》をついては、障子の日影が薄くなるのに、懶《....
「路上」より 著者:芥川竜之介
の隅に佇《たたず》みながら、別に開会を待ち兼ねるでもなく、ぼんやり周囲の話し声に
屈托《くったく》のない耳を傾けていた。
するとどこからか大井篤夫《おおいあつお....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
料を搾取《しぼりと》られ、商人に重い前借をしているにもかかわらず、とにかくさした
屈托《くったく》もしないで冬を迎えていた。相当の雪囲いの出来ないような小屋は一つ....
「デパートの絞刑吏」より 著者:大阪圭吉
ながら、西側の虎の檻に向って歩き出した。其処で喬介は、大きなアフリカ産の牡虎が、
屈托気に昼寝をしている姿を見詰めながら暫く深い思案に陥っていた。が、急に向き直っ....
「河明り」より 著者:岡本かの子
私は私の心の変態の働きに、極力用心しながら、室内の娘を見ると、いよいよ鮮かに何の
屈托もない様子で、歌留多の札を配っている。私はふと気がついて、 「あの女は、自分....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
て行くんだよ」 彼はミチミを励ますために、ぶっきら棒な口の利き方をした。そして
屈托のなさそうな顔をして、乗客に肩を押されながら、電車を下りた。―― それが女....
「巴里祭」より 著者:岡本かの子
とやかに入って来て、 ――剰ったのがありますから貸してあげますよ。」 それから
屈托そうに体をよじって椅子にかけて八角テーブルの上に片肘つきながら、新吉の作った....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
過度の労役の為めに消耗せる体力が、心地よき安静によりて完全に本復せる時、はげしき
屈托の為めに欝屈せる脳力が、適宜の娯楽によりて完全なる働きを取り戻した時こそは、....
「暗号数字」より 著者:海野十三
ちは大きな声で卑猥な歌をうたう。この暑いのにおでんでもあるまいとは思ったが、その
屈托のなさそうな三味線の音が帆村の心をうったらしく、彼はそこへ入って酒を所望した....
「或る秋の紫式部」より 著者:岡本かの子
」 式部「無駄骨であるか無いか、それは誰にも判らない」(式部はいつか筆を置いて、
屈托気に頬を襟に埋めている) 老侍女(不勝手ながら胸の中で頻りに考え廻らしている....
「高原の太陽」より 著者:岡本かの子
どういうものか」すると青年は、内懐にしていた片手を襟から出し片頬に当てていかにも
屈托らしく云った。かの女のあまり好かないこんな自堕落らしい様子をしても、この青年....
「取返し物語」より 著者:岡本かの子
う往のう』 (一同下手へ入る。花道よりおくみ、風呂敷包を抱え宿入り姿で出て来る。
屈托の様子。) おくみ『ああ、焦れる、焦れる。これではわたしの年に一度の奉公休み....
「二葉亭余談」より 著者:内田魯庵
込んでしまったので、この上最早言葉の接穂がなかった。 その当座は犬の事ばかりに
屈托して、得意の人生論や下層研究も余り口に出なかった。あたかも私の友人の家で純粋....
「快走」より 著者:岡本かの子
を上げてじっと見ていたが、ほーっと吐息をついて縫い物を畳の上に置いた。すると急に
屈托して来て、大きな脊伸びをした。肩が凝って、坐り続けた両腿がだるく張った感じだ....
「扉の彼方へ」より 著者:岡本かの子
、なんだと思っているところへ、ひょっこり帰って来た珪次の顔を見ると、生れつき何の
屈托も取付けそうにない爽な青年なのを、私ゆえのために、こうもしょんぼりさせている....