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屠所
「屠所〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
屠所の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
げ場を見いだした。なんといわれてもののしられても、打ち据《す》えられさえしても、
屠所《としょ》の羊のように柔順に黙ったまま、葉子にはまどろしく見えるくらいゆっく....
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
た和尚《おしょう》がある。気の引けるときは歩き方にも現われる。獣《けもの》にさえ
屠所《としょ》のあゆみと云う諺《ことわざ》がある。参禅《さんぜん》の衲子《のうし....
「幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
が、何と言い立てる思案もないから胸は波の様に起伏した、検査の室を指して行く間も、
屠所に入る羊の想いも斯くやと自分で疑った、室の入口へ行くと中から森探偵と警察医と....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
主人は白を抱き上げて八幡下に立って遙に目送して居る主婦に最後の告別をさせた。白は
屠所の羊の歩みで、牽かれてようやく跟いて来た。停車場前の茶屋で、駄菓子を買うてや....
「戦場」より 著者:夢野久作
を先頭にした一列縦隊に変化した。そうして一方は元気よく、勝誇ったように……一方は
屠所の羊のように、又は死の投影のように頸低れて、気絶した仲間を扶け起し扶け起し、....
「梅津只円翁伝」より 著者:杉山萠円
。途中で溝の中の蛙をイジメたり、白|蓮華を探したりして、道草を喰い喰い、それこそ
屠所の羊の思いで翁の門を潜ると、待ち構えている翁は虎が兎を掠めるように筆者を舞台....
「少年探偵長」より 著者:海野十三
士なのだ。 「さあ、先生、それじゃお気の毒でも、いっしょにきてもらいましょうか」
屠所にひかれる羊とは、このときの机博士のようなのをいうのであろう。よろよろと、足....
「今日の日本の文化問題」より 著者:宮本百合子
います。我々はあの当時どんなに無限の感慨をもってあの時計台をふりかえりふりかえり
屠所にひかれて行ったでしょう」。今日の働かなければならない学生たちは、はっきりと....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
かおいろ》を遠くから見ると、ちょうど、ところが千住の小塚原であるだけに、さながら
屠所《としょ》の歩みのような小坊主の気色《けしき》を見ると、いかにも物哀れで、群....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
五 恩になる姫様、勇美子が急な用というに悖い得ないで、島野に連出されたお雪は、
屠所の羊の歩。 「どういう御用なんでございましょう。いつも御贔屓になりますけれど....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
主人に笑顔を見せていたので、もうなんの希望もないことを彼は見てとった。そして彼は
屠所《としょ》に牽《ひ》かるる羊のように、夫人の案内に従っていった。 二人は庭....
「キャラコさん」より 著者:久生十蘭
うまく足の指にはさまらないので、キャラコさんは時々よろめく。首を垂れて、いわば、
屠所《としょ》の羊といったぐあいにトボトボとついてゆく。 さっきは雲煙万里だと....
「山吹」より 著者:泉鏡花
しろ手に人形の竹を持ちたる手を、その縄にて縛められつつ出づ。肩を落し、首を垂れ、
屠所に赴くもののごとし。しかも酔える足どり、よたよたとして先に立ち、山懐の深く窪....
「チベット旅行記」より 著者:河口慧海
を三枚ばかり買って来ました。それは私共が行って買うのではない。皮仕事をする人間が
屠所へ行って買って来るのですがその皮は誠に柔い。で、その血のついてある皮で箱を包....
「活人形」より 著者:泉鏡花
か。「あれ。と下枝は引立られ、殺気満ちたる得三の面色、こは殺さるるに極ったりと、
屠所の羊のとぼとぼと、廊下伝いに歩は一歩、死地に近寄る哀れさよ。蜉蝣の命、朝の露....