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帰心
「帰心〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
帰心の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「故郷を想う」より 著者:金史良
と思うと、丈夫な歯が抜けたように心の一隅が空ろである。 それでもやはり故郷への
帰心は抑え難くはげしい。これは一体どうしたものだろうか。左程に故郷を恋しく思わな....
「斬られたさに」より 著者:夢野久作
ッタリと中絶したせいでもあったろう。序にサゴヤ佐五郎の事も忘れてしまって文字通り
帰心矢の如く福岡に着いた。着くと直ぐに藩公へお眼通りして使命を果し、カタの如く面....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
やら。世間さえなくば、お見舞に上ろうものを」 お浜の附け加えたる言葉は竜之助の
帰心《きしん》を嗾《そそ》るように聞えたか、 「浜――」 「はい」 「二人で一度....
「夜の靴」より 著者:横光利一
人も恐らくこのような気持ちだったであろうと思われて、東京の空が千里の遠きに見え、
帰心しきりに起ることがある。しかし、妻は反対で、このままここで埋もれてもいい、ど....
「火葬国風景」より 著者:海野十三
流作家であることを懐しく思い、また誇りにも感じた。そう思いつくと、俄に矢のような
帰心に襲われたのだった。 「僕は断る。僕はやっぱり東京へ帰るよ」 「なに東京へ帰....
「小景」より 著者:宮本百合子
自分の家を慕わせる逢魔が時だ。 シャンシャン、シャンシャン。夕刊売の鈴の音が、
帰心にせかれる行人の心に、果敢《はか》ない底さむさを与える。 ぽつり、ぽつり、....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
す。 駒井殿も心配しているだろう、妻子にも逢いたくなった――ガラにもなく、この
帰心のために田山白雲の心が傷みました。 松島には狩野永徳が待っている――扶桑《....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
語って涙を呑んだこともあるはずです。江戸へ着いて、いずれの時かそれを思い起して、
帰心《きしん》矢の如きものあるべきは、情においても、理においても、当《まさ》にし....
「ふるさとに寄する讃歌」より 著者:坂口安吾
窓から、脂粉の匂に噎んでいた。湯垢の香に私はしみた。そして太陽を仰いだ。しきりに
帰心の陰が揺れた。 東京の空がみえた。置き忘れてきた私の影が、東京の雑沓に揉ま....
「少年連盟」より 著者:佐藤紅緑
同は六時にそこを出発した。家を出てから四日目である、早くるすいの友の顔を見たい、
帰心矢のごとく、午後の三時ごろにはもう家をさること一マイルのところへやってきた。....
「「太平洋漏水孔」漂流記」より 著者:小栗虫太郎
鼻の奥がじいんと滲みるような思い、自分はドイツ、ナエーアはサモアへ……。いずれも
帰心矢のごとしと云いながら、帰れない身だ。よくよく、おなじ運命のものがめぐり合わ....
「宝永噴火」より 著者:岡本かの子
へ帰った。秋の十月に諸国に地震があり、故郷の駿河も相当ひどかったということは彼の
帰心を弥が上にもそそったのであった。 彼は一先ず師匠の寺の松蔭寺へ落着いた。師....
「澪標」より 著者:外村繁
は五年生の庭球部の選手で、石鹿公園で会いたいという。が、私はそれどころではない。
帰心で、胸が一杯である。 しかし私はその手紙に――或はそんな男と男との関係に―....
「大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
みて、眷々の情に堪えざるを、今日のみは、これより夜を徹せん覚悟なれば、悠々として
帰心の清興を乱す無く、殊に愈本時刻に入るを喜ぶは、夜行して暁天に近づくを喜ぶに同....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
という。 又太郎は、うなずいた。 「さてこそ、いよいよ北方の乱は確実」 彼の
帰心は矢のごときものがある。 だが、溯り舟は、いとど遅い。また、若公卿の弁舌も....