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帰途
「帰途〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
帰途の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
を明らかに示されたようにも思った。そして怒りと失望とをいだきながらその家を出た。
帰途葉子は本屋に立ち寄って婦人病に関する大部な医書を買い求めた。それは自分の病症....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
せたく思った。丁度自分の畑の所まで来ると佐藤の年嵩《としかさ》の子供が三人学校の
帰途《かえり》と見えて、荷物を斜《はす》に背中に背負って、頭からぐっしょり濡れな....
「星座」より 著者:有島武郎
て熱していた。
昂奮《こうふん》が崇《たた》ったのか、寒い夜気がこたえたのか、
帰途につこうとしていた清逸はいきなり激しい咳に襲われだした。喀血《かっけつ》の習....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
た頃の若木の花。夫婦の色香を分けたのである、とも云うが…… 酒井はどこか小酌の
帰途と覚しく、玉樹一人縁日の四辺を払って彳んだ。またいつか、人足もややこの辺に疎....
「絵本の春」より 著者:泉鏡花
中から、葉をざわざわと鳴らすばかり、脊の高い、色の真白な、大柄な婦が、横町の湯の
帰途と見える、……化粧道具と、手拭を絞ったのを手にして、陽気はこれだし、のぼせも....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
よ。男が先に、気取って洋杖なんかもって――あれでしょう。三郎さんを突いたのは――
帰途は杖にして縋ろうと思って、ぽう、ぽっぽ。……いま、すぐ、玄関へ出ますわ、ごら....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
し、松崎は、男女、その二人の道ずれでも何でもない。当日ただ一人で、亀井戸へ詣でた
帰途であった。 住居は本郷。 江東橋から電車に乗ろうと、水のぬるんだ、草萌の....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
ほとんど無言だ。……」 「ほとんど処か全然無言で。……店頭をすとすと離れ際に、「
帰途に寄るよ。」はいささか珍だ。白い妾に対してだけに、河岸の張見世を素見の台辞だ....
「縁結び」より 著者:泉鏡花
出る。その東雲御覧を、今やこれ午後二時。さるにても朝寝のほど、昨日のその講演会の
帰途のほども量られる。 「お客様でございますよう。」 と女中は思入たっぷりの取....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
は答えず、やや石段の前を通った。 しばらくして、 「銑さん、」 「ええ、」 「
帰途に、またここを通るんですか。」 「通りますよ。」 「どうしても通らねば不可ま....
「ある自殺者の手記」より 著者:秋田滋
ッたひとりで生きている余りにも小ッぽけな存在だという気がした。で、私は怱々とまた
帰途につくのだった。 しかし、帰って来れば来るで、三十年このかた同じ場所に置い....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
れど情心あり。主公は朋友の懇親会に幹事となりてかの夜、木母寺の植半にて夜を更して
帰途なりしとなり。その事を言い出て大いに笑われたり。予は面目なく覚えたり。小女を....
「ファラデーの伝」より 著者:愛知敬一
り、前年の時よりも噴火の一層活動せるを見て大いに喜んだ。 このとき何故か、急に
帰途に就くこととなり、三月二十一日ネープルを出立、二十四日ローマに着、チロールか....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
沢で見知越の、いま尋ねようとして、見合わせた酒造家の、これは兄ごで、見舞に行った
帰途だというのです。この男の住居が黒島で、そこへその晩泊りますが、心あての俳友は....
「北海道に就いての印象」より 著者:有島武郎
聞かせてくれた。又私の処で夜おそくまで科学上の議論をしていた一人の若い科学者は、
帰途晴れ切った冬の夜空に、探海燈の光輝のようなものが或は消え或は現われて美しい現....