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常夏
「常夏〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
常夏の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「吉原新話」より 著者:泉鏡花
、投遣りな投放しに、中を結んだ、紅、浅葱の細い色さえ、床の間の籠に投込んだ、白い
常夏の花とともに、ものは言わぬが談話の席へ、仄な俤に立っていた。 が、電燈を消....
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
夏が来たのである。 甲斐の盆地の夏景色は、何んともいえず涼々しく、釜無河原には
常夏が咲き夢見山には石楠花が咲き、そうしてお館の木深い庭を蛍が明滅して飛ぶように....
「春昼」より 著者:泉鏡花
っと大きな池もあります。一面に青草で、これに松の翠がかさなって、唯今頃は菫、夏は
常夏、秋は萩、真個に幽翠な処、些と行らしって御覧じろ。」 「薄暗い処ですか、」 ....
「絵本の春」より 著者:泉鏡花
が累なって、人死も夥多しかった。伝説じみるが事実である。が、その時さえこの川は、
常夏の花に紅の口を漱がせ、柳の影は黒髪を解かしたのであったに―― もっとも、話....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
ゃと潮へ入った。褄をくるりと。」 「危やの。おぬしの前でや。」 「その脛の白さ、
常夏の花の影がからみ、磯風に揺れ揺れするでしゅが――年増も入れば、夏帽子も。番頭....
「地軸作戦」より 著者:海野十三
と去ると、ネルスキーはにたりと笑って、額の汗をふいた。 「燻製十箱で、シベリアが
常夏の国になれば、電信柱も愕いて花を咲かせるだろう。とにかくこれが実現されれば、....
「錦染滝白糸」より 著者:泉鏡花
の花籠に、黄の小菊と白菊の大輪なるを莟まじり投入れにしたるを視め、手に三本ばかり
常夏の花を持つ。 傍におりく。車屋の娘。 撫子 今日は――お客様がいらっしゃるッ....
「楢重雑筆」より 著者:小出楢重
い。 それでわれわれ骨人とか半透明体なるものは天上陽気の夏こそ正によろしいが、
常夏の国ではない我が日本国にあっては平均すると寒い期間、即ち影をひそめていなけれ....
「連環記」より 著者:幸田露伴
合ったことのあったのは、これも贈答の歌が幾首も残っているので分明である。梅の花、
常夏の花などにつけて、定基の母の歌をおこしたのに右衛門の返ししたのもあり、又右衛....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
きました、……この手|桶から、」…… と姥は見返る。捧げた心か、葦簀に挟んで、
常夏の花のあるが下に、日影涼しい手桶が一個、輪の上に、――大方その時以来であろう....
「灯明之巻」より 著者:泉鏡花
リと目に涼しい、薄色の、一目見て紛う方なき女持ちの提紙入で。白い桔梗と、水紅色の
常夏、と思ったのが、その二色の、花の鉄線かずらを刺繍した、銀座むきの至極当世な持....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
その墓は故郷にある。「お許婚……?」「いや、」一葉女史の墓だときいて、庭の垣根の
常夏の花、朝涼だから萎むまいと、朝顔を添えた女の志を取り受けて、築地本願寺の墓地....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
、「相見れば常初花に、情ぐし眼ぐしもなしに」(巻十七・三九七八)、「その立山に、
常夏に雪ふりしきて」(同・四〇〇〇)、「白砥掘ふ小新田山の守る山の末枯れ為無な常....
「生死卍巴」より 著者:国枝史郎
た。岩燕が滝壺を巡って啼き、黄色い苔の花が咲いていた。その苔の花にまじりながら、
常夏の花が咲き乱れていた。 ※|果物の木に匂いあり 御神水と黒石とに、 虹の光の....
「希望」より 著者:小川未明
られた雲の間から、一そうの銀色の船が、星のように見えました。そして、その船には、
常夏の花のような、赤い旗がひらひらとしていました。 「あの船だ!」 青年は、夢....