年の瀬[語句情報] » 年の瀬

「年の瀬〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

年の瀬の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
火の鳥」より 著者:太宰治
もぐり込んだ。 そうして、その日から、さちよの寄棲《きせい》生活がはじまった。年の瀬、お正月、これといういいこともなくするする過ぎた。みぞれの降る夜、ふたりは....
右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
でござってのう、長年、ごめんどううけた主家が左前になったゆえ、ほっておいてはこの年の瀬も越せぬ、世間にぼろを出さず、鈴文の信用にも傷をつけず、傾きかけたのれんを....
右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
、義を見てはだれより強く、情に会っては何びとより涙もろい人情家のむっつり右門は、年の瀬が迫ってきても、だれひとり人の世の親身な暖かさを与え知らすもののないこの可....
世相」より 著者:織田作之助
るうちに年も暮れて、大晦日が来た。私はソワソワと起ち上ると外出の用意をした。 「年の瀬の闇市でも見物して来るかな」 呑気に聴えるが、苦しまぎれであった。西鶴の....
うつり香」より 著者:近松秋江
ぞろぞろ二階に上ったり下りたりしている。 勝手口に近い隣の置屋では多勢の売女が年の瀬に押し迫った今宵一夜を世を棄てばちに大声をあげて、 「一夜添うても妻は妻。....
新世帯」より 著者:徳田秋声
門にはもう軒並み竹が立てられて、ざわざわと風に鳴っていた。殺風景な新開の町にも、年の瀬の波は押し寄せて、逆上せたような新吉の目の色が渝っていた。お国はいつの間に....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
も、村其ものには何処に師走の忙しさも無い。二十五日、二十八日、晦日、大晦日、都の年の瀬は日一日と断崖に近づいて行く。三里東の東京には、二百万の人の海、嘸さま/″....
新釈諸国噺」より 著者:太宰治
はどうも、金に困るとなおさら酒を飲みたいたちで、そのために不義理の借金が山積して年の瀬を迎えるたびに、さながら八大地獄を眼前に見るような心地が致す。ついには武士....
残されたる江戸」より 著者:柴田流星
の繰返して以上を説いたことを、何分どうか味って見て頂きたいもので……。 大晦日年の瀬の流れながれていよいよおしつもった大晦日、三百六十五日の最終の日にのぞんで....
年賀状」より 著者:寺田寅彦
今度はそれが大きな苦労の種となった。わがままで不精な彼にとって年賀状というものが年の瀬に横たわる一大暗礁のごとく呪わしきものに思われて来たのだそうである。 「同....
経帷子の秘密」より 著者:岡本綺堂
、わたしは井戸屋に顔向けが出来ないばかりでない。ここで井戸屋に見放されたら、この年の瀬を越しかねて数代つづいた万屋の店を閉めなければならない事にもなる。そこを察....
幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
たかい」といったように静かに滑って行くのが見えました。 かくて、浅草は落寞たる年の瀬を越し、淋しい初春を迎えたことであった。....
モルガンお雪」より 著者:長谷川時雨
ろいろ》と、いろいろの人のを染めるなかに、この新郎新婦の結婚着も染められたのだ。年の瀬と共に川の水はそんなことも流してもいたのだ。 三十七年一月、横浜の米国領....
棚田裁判長の怪死」より 著者:橘外男
でいる」 と、事件の真相を知るの難きを、嘆じているのですが、越えてさらに二日、年の瀬を慌ただしさを加えた十二月二十八日の追報記事に至っては、読者の好奇心に訴え....
友情に関係あるエッセイ」より 著者:戸坂潤
之は何としたことだろうか。 私は言葉通り無為と徒然との境遇の内に、いつか不惑の年の瀬を越えて了った。常識の一種からすれば四〇歳はたしかに生涯の一つの自然な転期....