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幻の世
「幻の世〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
幻の世の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「薤露行」より 著者:夏目漱石
てな》に一人を住み古りて、しろかねの白き光りの、表とも裏とも分ちがたきあたりに、
幻の世を尺に縮めて、あらん命を土さえ踏まで過すは阿呆《あほう》の極みであろう。わ....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ある。
「すると、前室の湯滝を作ったのは、何のためだい。そして、中室の床に美しい
幻の世界を作って、その上の足跡を消してしまったのは?」と狂熱的な口調でやり返して....
「からすうりの花と蛾」より 著者:寺田寅彦
嫁の花婿であったところの老学者の記憶には夕顔の花と蛾とにまつわる美しくも悲しい夢
幻の世界が残っている。そう言って彼は私にささやくのである。私には彼女がむしろから....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
愛せんとする要求があると思う。私はかかる境地に向かって憧れ進みたい。 花やかな
幻の世界は永久に私の前に閉ざされた。私はもっと強実なる人生を欲する。代赭色の山坂....
「木下杢太郎『唐草表紙』序」より 著者:夏目漱石
私の周囲を蜘蛛《くも》の糸の如く取り巻いて、散文的な私を、何時《いつ》の間にか夢
幻の世界に連れ込んで行ったのをよく記憶しています。私の心は次第々々に其中に引き込....
「風流仏」より 著者:幸田露伴
るべしと、評せしは両親を寺参りさせおき、鬼の留守に洗濯する命じゃ、石鹸玉|泡沫夢
幻の世に楽を為では損と帳場の金を攫み出して御歯涅溝の水と流す息子なりしとかや。珠....
「推理小説について」より 著者:坂口安吾
するあまりのことで氏の愛情まことに深情け、あげくに惚れたアノ子を世の常ならざる夢
幻の世界へ生かそうという、至情もっともであるが、いささか窮窟だ。探偵小説はこうで....
「作男・ゴーの名誉」より 著者:チェスタートンギルバート・キース
でいる松林は小塔の緑色と対比して無数の渡鳥の群のように黒く見えた。こうした人を夢
幻の世界か、または睡たげな魔界のような雰囲気の中に惹込むのは、ただこの景物ばかり....
「烏瓜の花と蛾」より 著者:寺田寅彦
嫁の花婿であったところの老学者の記憶には夕顔の花と蛾とにまつわる美しくも悲しい夢
幻の世界が残っている。そう云って彼は私に囁くのである。私には彼女がむしろ烏瓜の花....
「息を止める男」より 著者:蘭郁二郎
くれたのである。それがどんな妖しい話であったか。 『僕が息を止めている間に様々な
幻の世界を彷徨するというとさも大嘘のように思うだろうがまあ聞いてくれ給え。 例....
「わが寄席青春録」より 著者:正岡容
れたこの年長の友だちは、同じく失恋の痛手を一時たりとも癒すべく恋々していたこの夢
幻の世界をものの見事に破壊してしまった。しかも、相手は売女であって、正蔵君の方は....
「狂女と犬」より 著者:小酒井不木
を迷ったということが何かこう一種の因縁のように思われて来て、私のあこがれて居る夢
幻の世界へ踏み入る第一歩であるような気がした。或は、ことによると、世に言う狐狸の....
「墓が呼んでいる」より 著者:橘外男
家中でどんな騒ぎを起さぬとも限りません。私は父の手紙を受け取って初めて、楽しい夢
幻の世界から、また現実の儘ならぬ世界へ、引き戻されたような気になりました。ともか....
「かもめ」より 著者:神西清
わたし、こわい…… トリゴーリン その気になりさえすりゃ、非凡な女になれるんだ。
幻の世界へ連れていってくれるような、若々しい、うっとりさせる、詩的な愛――この世....
「ロザリオの鎖」より 著者:永井隆
お茶をおいたのだと思う。丸ぼうろを手にとる。今どき、こんな大きなお菓子がある所は
幻の世界だけである。口に入れてみたら、昔の丸ぼうろだった。一つ食べ、二つ食べ、三....