幽か[語句情報] » 幽か

「幽か〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

幽かの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
宣言一つ」より 著者:有島武郎
かったら、これは大きな誤謬《ごびゅう》だといわなければならない。その動き方は未だ幽かであろうとも、その方向に労働者の動きはじめたということは、それは日本にとって....
水害雑録」より 著者:伊藤左千夫
る。助け舟を呼んだ人は助けられたかいなかも判らぬ。鉄橋を引返してくると、牛の声は幽かになった。壮快な水の音がほとんど夜を支配して鳴ってる。自分は眼前の問題にとら....
婦系図」より 著者:泉鏡花
く、藤紫のぼかしに牡丹の花、蕊に金入の半襟、栗梅の紋お召の袷、薄色の褄を襲ねて、幽かに紅の入った黒地友染の下襲ね、折からの雨に涼しく見える、柳の腰を、十三の糸で....
惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
り」といってお前を弁護したではないか。お前の神と称していたものは、畢竟するに極く幽かな私の影に過ぎなかった。お前は私を出し抜いて宗教生活に奔っておきながら、お前....
海異記」より 著者:泉鏡花
うによ。 おらが肩も軽くなって、船はすらすらと辷り出した。胴の間じゃ寂りして、幽かに鼾も聞えるだ。夜は恐ろしく更けただが、浪も平になっただから、おらも息を吐い....
吉原新話」より 著者:泉鏡花
八畳一杯|赫と陽気で、ちょうどその時分に、中びけの鉄棒が、近くから遠くへ、次第に幽かになって廻ったが、その音の身に染みたは、浦里時代の事であろう。誰の胸へも響か....
縁結び」より 著者:泉鏡花
いか、廊下を、ばた、ばた、ばた、どたんなり。 「お入ンなさい、」 「は、」 と幽かに聞いて、火鉢に手をかけ、入口をぐっと仰いで、優い顔で、 「ご遠慮なく……私....
化銀杏」より 著者:泉鏡花
「お前、このごろから茶を断ッたな。」 「いえ、何も貴下、そんなことを。」 と幽かにいいて胸を圧えぬ。 時彦は頤のあたりまで、夜着の襟深く、仰向に枕して、眼....
黒百合」より 著者:泉鏡花
ながら異常なものであった。 急に答がないので、更に、 「誰だ。」 「はい、」と幽かに応えた。 理学士が一生にただ一度目を開いて見たいのは、この時の姿であった....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
に進み得たのであると申すことでございます。そんな面倒な手続を踏んであってさえも、幽から顕に、肉体のないものから肉体のあるものに、移り変るには、実に容易ならざる御....
」より 著者:秋田滋
墓番は用心に用心をして歩いてゆくと、まもなく、マランヴェール路の方角にあたって、幽かな灯影が見えた。抜足差足、跫音を忍ばせて墓石と墓石のあいだを歩いて行き、彼は....
親ごころ」より 著者:秋田滋
える声はなかった。けれども車大工には気のせいか、その辺の闇のなかで呻くような声が幽かに聞えるようだった。彼はながい間じッと耳を澄して聞いていた。ある時は右の方に....
式部小路」より 著者:泉鏡花
て、揺れず、なだらかになったと思うと、前髪も、眉も、なかだかな鼻も、口も、咽喉の幽かに見えるのも、色はもとより衣紋つきさえ、明くなって、その半身をありありと水底....
活人形」より 著者:泉鏡花
るるが一い二ウ三いと数うるに勝えず。遥か彼方に戸を閉じたる一室ありて、燈火の灯影幽かに見ゆるにぞ、要こそあれと近附きて、ひたと耳をあてて聞くに、人のあるべき気勢....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
々と腰かけて憩んで居るときなどその騒々しい気分がよく了解されてくる。多くは極めて幽かな山風が松の梢を渡って行くために起る松籟が耳辺を掠めてゆくのである。そうした....