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幽遠
「幽遠〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
幽遠の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「首を失った蜻蛉」より 著者:佐左木俊郎
筆を並べ立てたかと思われる程真っ直ぐな幹を美しく並べ揃え、目先を遮《さえぎ》って
幽遠さを見せている。それに赤い夕陽が斜めに光線を投げて、木立の中に縞《しま》の赤....
「文芸の哲学的基礎」より 著者:夏目漱石
欠いてるから駄目だと云うのは、云う方が駄目《だめ》です。ミレーの晩祈の図は一種の
幽遠な情をあらわしている。そこに目がつけば、それでたくさんである。この画には意志....
「善の研究」より 著者:西田幾多郎
的より説明しようとするのである。 しかし斯《か》く意志の本を物質力に求め、微妙
幽遠なる人生の要求を単に生活欲より説明しようとするのは頗《すこぶ》る難事である。....
「自由画稿」より 著者:寺田寅彦
にしてもいもりの黒焼きの効果だけは当分のところ、物理学化学生理学の領域を超越した
幽遠の外野に属する研究題目であろうと思われる。もっとも蝶《ちょう》のある種類たと....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
。事が娑婆世界の実事であり、いま説いていることが儒教の道徳観に本づくとせば、縹緲
幽遠な歌調でない方が却って調和するのである。由来儒教の観相は実生活の常識であるか....
「小春」より 著者:国木田独歩
とも、容易には落ちない。冬の夜嵐吹きすさぶころとなっても、がさがさと騒々しい音で
幽遠の趣をかき擾している。 しかし自分はこの音が嗜きなので、林の奥に座して、ち....
「病中記」より 著者:寺田寅彦
いたが寒いとも暑いともそういう感じはどこかへ逃げ去ってしまって、ただ静寂なそして
幽遠なような感じが全身を領して三時の来るのが別に待遠しく思われなかった。 寝台....
「「草野心平詩集」解説」より 著者:豊島与志雄
なのだ。 三 人事は常に変転するが、自然のうちには、些細なものにも
幽遠な影が宿っている。一塊の石にも、億年の姿がこもり、或は壮大な光りが映る。 ....
「九代目団十郎の首」より 著者:高村光太郎
大顴骨筋と咬筋とそれを被う脂肪と、その間を縫うこまやかな深層筋の動きとは彼の顔に
幽遠の気を与え、渋味を与え、或時は凄愴直視し難いものを与える。団十郎は鼻下長であ....
「蝉の美と造型」より 著者:高村光太郎
のでないから詳細は知らない。ハルゼミは先年五月末越後長岡の悠久山の松林の中でその
幽遠な声を聞いたが、姿は見なかった。 セミの彫刻的契機はその全体のまとまりを作....
「淡紫裳」より 著者:佐藤垢石
のうちに対岸の平野を黙々と飾る灯と、牡丹台の崖にちらつく灯が相対して、ほんとうに
幽遠を思わしめたのである。 宴席に、六、七人の妓生が現われた。二十二、三歳から....
「古寺巡礼」より 著者:和辻哲郎
の形が、色彩の力を一層高めているのであろう。と同時にまたあの古雅な色調が堂の形に
幽遠な生の香気を付与しているのであろう。 金堂の大きい乾漆像を修繕しつつあるS....
「性に眼覚める頃」より 著者:室生犀星
で純白の玉を飛ばしたようであった。私は毎年この季節になると、ことにこの霰を見ると
幽遠な気がした。冬の一時のしらせが重重しく叫ばれるような、慌しく非常に寂しい気を....
「幼年時代」より 著者:室生犀星
しまうような気がするのであった。何も彼も忘れ洗いざらした甘美な一瞬の楽しさ、その
幽遠さは、あたかも午前に遊んだ友達が、十日もさきのことのように思われるのであった....
「後の日の童子」より 著者:室生犀星
その三人の影はまるで有るか無いかのように、畳と壁の上に稀薄であった。かれらは何か
幽遠なものにでも対いあうように、ひとりずつが、何を手頼ってよいか、そして何を信じ....