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幾重
「幾重〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
幾重の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
る山駅《さんえき》の茶店に足を休めていた。左近はまず甚太夫の前へ手をつきながら、
幾重《いくえ》にも同道を懇願した。甚太夫は始《はじめ》は苦々《にがにが》しげに、....
「女」より 著者:芥川竜之介
団は炎暑を重く支えている薔薇の葉の上にひしめき合った。またその一団は珍しそうに、
幾重《いくえ》にも蜜の※《におい》を抱《いだ》いた薔薇の花の中へまぐれこんだ。そ....
「少年」より 著者:芥川竜之介
に飛んで行った。あの船や鴎はどこから来、どこへ行ってしまうのであろう? 海はただ
幾重《いくえ》かの海苔粗朶《のりそだ》の向うに青あおと煙っているばかりである。…....
「火星探険」より 著者:海野十三
階をぶっ通した煙突《えんとつ》のような部屋だった。その艇長の部屋に、複雑な機械が
幾重にも重なりあい、大小さまざまのパイプは魚の腸《はらわた》の如くに見え、紫色に....
「太平洋魔城」より 著者:海野十三
ら海底要塞の方から、つよい光を出して照らしつけているらしく、体をうごかすと、影が
幾重ものあわい縞となってふるえるのであった。太刀川は、めずらしげに、あたりに注意....
「若菜のうち」より 著者:泉鏡花
何でもない。川音がタタと鼓草を打って花に日の光が動いたのである。濃く香しい、その
幾重の花葩の裡に、幼児の姿は、二つながら吸われて消えた。 ……ものには順がある....
「空襲警報」より 著者:海野十三
る係ができ、そしていよいよ全員が手分をして、眼張作業が始まった。紙と布とを飯粒で
幾重にも隙間に張りかさねるのだった。例の紳士も、命ぜられて飯粒を盛んにこねまわし....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
巻だった。杜は咄嗟にそれをピリピリとひき裂くと、赤爛れになっている女の手首の上に
幾重にも捲いてやった。 5 杜がトラックを下りると、お千も突然、あた....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
や、これはまたお耳障り。いや就きまして……令嬢に折入ってお願いの儀が有りまして、
幾重にも御遠慮は申しながら、辛抱に堪えかねて罷出ました。 次第と申すは、余の事....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
まって振向いた。 「髪の毛ですわ……あら、私ンじゃない。」 しごいて、引いて、
幾重にも巻取るようにした指を、離すと、すっと解けて頬を離れる。成程、渚のではない....
「不周山」より 著者:井上紅梅
出して宇宙の中に満ち渡った。 彼女は自分の眼をこすった。 薄紅色の大空には、
幾重にも千切れ千切れの薄緑の浮雲が漂い、星がその後に瞬いて光っては消え、光っては....
「夫人利生記」より 著者:泉鏡花
お医師を煩わすほどでもなかった。が、繃帯した手に、待ちこがれた包を解いた、真綿を
幾重にも分けながら。 両手にうけて捧げ参らす――罰当り……頬を、唇を、と思った....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
た幻が裏階子に彳んだり、火の車を引いて鬼が駆けたり、真夜中の戸障子が縁の方から、
幾重にも、おのずからスッと開いて、青い坊さんが入って来たりするのでありますから、....
「妖怪学」より 著者:井上円了
干しを一つ茶に入れて食い、そのたねを口より紙の中に吐き出して、風のあたらぬように
幾重も包みて、箱の内にしまいおくべし。果たして風を引かずという。また、手足の爪を....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
月遊歩去、樹下凍風来。(那威行路所見) (八月には欧州の北に旅し、那の山には雪が
幾重にも積もっていた。谷のあたりを歩めば、樹下には凍てつく風が吹いてきたものだっ....