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「底気味〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

底気味の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
」より 著者:芥川竜之介
た幻の中には、時々暗い雲の影が、一切《いっさい》の幸福を脅《おびやか》すように、底気味悪く去来していた。成程お君さんは田中君を恋しているのに違いない。しかしその....
」より 著者:芥川竜之介
た》まった脚、――蜘蛛はほとんど「悪」それ自身のように、いつまでも死んだ蜂の上に底気味悪くのしかかっていた。 こう云う残虐《ざんぎゃく》を極めた悲劇は、何度と....
妖婆」より 著者:芥川竜之介
いな気組でしたから、墨を流した空に柳が聳えて、その下に竹格子の窓が灯をともした、底気味悪い家の容子《ようす》にも頓着せず、いきなり格子戸をがらりとやると、狭い土....
或る女」より 著者:有島武郎
月家《さつきけ》は砂の上の塔のようにもろくもくずれてしまった。親佐はことに冷静な底気味わるい態度で夫婦の別居を主張した。そして日ごろの柔和に似ず、傷ついた牡牛《....
カインの末裔」より 著者:有島武郎
の日も昨夜《ゆうべ》の風は吹き落ちていなかった。空は隅《すみ》から隅《すみ》まで底気味悪く晴れ渡っていた。そのために風は地面にばかり吹いているように見えた。佐藤....
義血侠血」より 著者:泉鏡花
着けたりしに、今この散財《きれはなれ》の婦女子《おんな》に似気なきより、いよいよ底気味悪く訝《いぶか》れり。 世話人は帽子を揺り動かして銭を鳴らしつつ、 「〆....
金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
うが、機械人間が物言うように発声の構造が云っているのだ。でなければ何とも知れない底気味悪い遠方のものが云っているのだ。そうとしか取れない。多少のいやらしさ、腥さ....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
か、猫の死骸に念仏をいいにきたんじゃないだろうが」 カークは、いつもとちがって底気味悪さを湛えている座間を景気づけるように言った。すると、座間はいきなりふり向....
愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
進もうと思った。 かくて極端なる利己主義者となった。それもショウペンハウエルの底気味悪き思想を潜りて出でたる戦闘的態度の利己主義であった。初めより生の悲痛と不....
黒百合」より 著者:泉鏡花
。」 「知らないね。」と気取った代脉が病症をいわぬに斉しい。 わざと打解けて、底気味の悪い紳士の胸中を試みようとしたお雪は、取附島もなく悄れて黙った。 二人....
貞操問答」より 著者:菊池寛
に鳴り林に響いて、樹々の葉が、引く潮に誘われる浜砂のように、サーッと鳴って、一瞬底気味わるい静寂が、天地を領した。と、たちまち眼の前の、ぼーっとした仄暗い空を切....
歌麿懺悔」より 著者:邦枝完二
やら消え失せてしまうと、あれほど人の行き来に賑わってた浅草も、たちまち木の下闇の底気味悪いばかりに陰を濃くして、襟を吹く秋風のみが、いたずらに冷々と肌を撫でて行....
」より 著者:岡本かの子
しいことはない。したがもし万事承知の上で誑かされたふうをしていられるなら、こんな底気味悪くも頼母しいお方はない、どちらにしても、とつおいつのお慕わしさ、恋しさが....
宝永噴火」より 著者:岡本かの子
裂いて投げつけるような女子供の叫び声が挙がる。そして間もなく地軸を捻じ切るような底気味の悪い大音響が天地を支配して、洪水のように火焔は空に吐きかけるのだ。そのと....
機密の魅惑」より 著者:大倉燁子
いたしません。こんな女の申す事など本気で聞いても居りませんが、それでいて何となく底気味悪い不吉な予感に襲われるのでございます。 手紙を読み終るのを待ってS夫人....