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庭面
「庭面〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
庭面の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「ほととぎす」より 著者:堀辰雄
をお見送りした後、一人ぎりになって、私はそのままいつまでもその暮れようとしている
庭面《にわも》をぼんやりと見入っていた。一種言うに言われないほどの好い匂が、とき....
「風立ちぬ」より 著者:堀辰雄
うに見える些細《ささい》な印象の方にすっかり気をとられていたのだ。…… そんな
庭面《にわも》はまだほの明るかったが、気がついて見ると、部屋のなかはもうすっかり....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
きょうほん》しておりまして――」
大作がこう申しあげて顔色をうかがうと、前面の
庭面を見つめてふっと片手をあげた大岡越前、事もなげに大作を振り返って、
「評判の....
「恩人」より 著者:豊島与志雄
離れて行くような気がした。 彼は立ち上って室の前の廊下に出て、窓を開き乍ら下の
庭面に眼をやった。曇り空の明るみが庭一面に澱んで、そよともしない新緑の樹々の間を....
「市川九女八」より 著者:長谷川時雨
が、間違ってた。」 九女八は、鷺草の、白い花がポツポツと咲き残るのへ降る雨が、
庭面《にわも》を、真っ青に見せて、もやもやと、青い影が漂うようなのに、凝《きっ》....
「予言」より 著者:久生十蘭
に澄んだ初冬の暮れ空のどこかに、夕焼けの赤味がぼーっと残っている。樹のない芝生の
庭面《にわづら》の薄明りに溶けこみ、空と大地のけじめがなくなって、曇り日の古沼の....
「鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
祭りの生贄は!」 鳴門舞の謡声より、なお太やかな音声をして、阿波守重喜ハッタと
庭面を睨みすえた。 そこには憔悴した俵同心、一角に縄尻をとられて控えている。 ....
「三国志」より 著者:吉川英治
ずに召上がるなんて、飛んでもない」 と、その箸をもって、料理の一品をはさんで、
庭面へ投げやると、そこにいた飼犬が、とびついて喰べてしまった。 「……やっ?」 ....
「三国志」より 著者:吉川英治
る」 久し振り、酒など飲んで、妻にも語り、その晩はわが家に寝た。 翌朝、ふと
庭面を見ると、妻は庭の落ち葉を積んで、焚火をしていた。呉押獄は、あっと驚いて、 ....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
の、明朝、六波羅武士の迎えにまかせ、東国へ下る」 言いかけて、俊基は、ふと眼を
庭面へそらした。 そこに、うずくまっていた家職の侍、後藤助光の姿に、ふと気づい....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
障子をサッとあけた。 浄明はその不意なのにおどろいた。濡れ縁を跳び退くやいな、
庭面の遠くで片手と片膝を地についた。そしてさて、胆をすえてから、夕のあいろを透し....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
。 「はて。……見えんではないか。どこにおる、正成は」 すると、まだほの明るい
庭面の階の下で。 「これにおります。いつもごきげんようわたらせられ、大慶に存じあ....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
うなずいて。 「いや、そうか、そうでしたか!」 爺の左近は、そばでふとおもてを
庭面へそらした。時ならぬ朝霜はもうあとかたもない。けれど爺は洟をすすっていた。 ....
「黒田如水」より 著者:吉川英治
てまた、室殿と村重も、一つ部屋にこそいたが、まったくべつな方を向いて、べつな心で
庭面に向っていた。 「なに、亥十郎が会いたいと。こんな所へ来ないでもよかろうに」....
「大岡越前」より 著者:吉川英治
と観るべきか。また、くだらぬ泡沫と観るべきか。 「……おや?」 かれは、ふと、
庭面の秋草へ、ひとみをこらした。はたと、虫の音が一ときにやんだからである。 「お....