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引き出す
「引き出す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
引き出すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
を一枚繰って、そこからさし込む光で大きな手文庫からぎっしりつまった男文字の手紙を
引き出すと風呂敷《ふろしき》に包み込んだ。そしてそれをかかえて、手燭《てしょく》....
「或る女」より 著者:有島武郎
《おかみ》は口をきった時のうれしげな様子にも似ず、襦袢《じゅばん》の袖《そで》を
引き出すひまもなく目に涙をいっぱいためてしまっていた。葉子にはそれが恨めしくも憎....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
いう命題を与えて、それからまずこれは絶滅することのできないものであるという結論を
引き出すことができるというのである。 紀元前五世紀の道教学者列子は『始めに、一....
「世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
の言葉は極めて平凡普通であった。よんどころない必要に迫られて、心の奥底から無理に
引き出すような言葉は、喜怒哀楽とか飢渇とかの本能だけしか現わすことの出来ない動物....
「政治に関する随想」より 著者:伊丹万作
は国民の政治意識があまりにも低すぎることであり、一つは現在の立候補手続きが人材を
引き出すようにできていないことである。 現在の国民大衆の政治意識がいかに低いも....
「水害雑録」より 著者:伊藤左千夫
避難にかかった。かねてここと見定めて置いた高架鉄道の線路に添うた高地に向って牛を
引き出す手筈である。水深はなお腰に達しないくらいであるから、あえて困難というほど....
「妖怪学」より 著者:井上円了
一人は知らず識らず微声を発して、これに誦和すると同一理なり。 手の先より細糸を
引き出す秘法 俗間に伝わるところのいろいろの奇怪ある中に、糸引きの秘法と申すもの....
「消えた霊媒女」より 著者:大倉燁子
つずつ丁寧に見て行きますと、ふと帯の間に挟んだ白いものが目につきました。何気なく
引き出すとそれは白の角封筒にかかれた妻宛の一通の手紙でした。差出人の名はありませ....
「素晴しい記念品」より 著者:大倉燁子
の刑事に密告した。それから間もなく家宅捜査が行われストーヴの中から燃え残りの薪を
引き出すと、それに一つまみほどの長い女の髪の毛が、からみついていた、それ以外は何....
「魂の喘ぎ」より 著者:大倉燁子
見えて、藤原侯が家宝売り立てをやるそうだ」と白い角封筒を渡した。 次長は中味を
引き出すと低い声で、 「拝啓、菊花の候益々御多祥奉賀候、就ては来る十月十五日拙宅....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
で違うのよ。あらゆるものを認めてそれを一たん無の価値にまで返し、其処から自由性を
引き出す流通無碍なものということなのよ。それこそ素晴しく闊達に其処からすべての生....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
よく聞こえなかった。邸へ帰ると、彼女は自分の部屋へかけ込んで、手袋から彼の手紙を
引き出すと、手紙は密封してなかった。読んでみると、それはドイツの小説の一字一句を....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
みに来る以上、いずれ何かの事件が出来したのは判り切っているので、半七は相手の話を
引き出すように気軽く答えた。 「はあ、そうですか。そこで、その一件というのは何か....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
気味悪く思われるのであるが、その色は妙に神経を唆るのみのことで、勿論推定の端緒を
引き出すものではなかった。そして、蔕のないところから推して、そこから泥状の青酸加....
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
ハイト》が輝くのだ。けれども、やがて暗い黄に移り、雲が魚のような形で、南の方に棚
引き出すと、時江はその方角から、ふと遣瀬《やるせ》ない郷愁を感じて、心が暗く沈ん....