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引く手
「引く手〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
引く手の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
次の間の小夜子は、長火鉢の二番目の抽出《ひきだし》を二寸ほど抜いたまま、はたりと
引く手を留めた。 先生の苦々《にがにが》しい顔は一層こまやかになる。想像力のな....
「雪之丞変化」より 著者:三上於菟吉
、太夫、わたしには、まだそなたのこころが、しっくりと判らない気がしてなりません。
引く手あまたの人気役者が、こんな不意気《ぶいき》な女なぞを、しんからかれこれ思っ....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
、踊り構えの、さす手に上った。同時である。おなじように腰を捻った。下駄が浮くと、
引く手が合って、おなじく三本の手が左へ、さっと流れたのがはじまりで、一列なのが、....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
くりと紐を噛む、ト袖口を軽く袂を絞った、小腕白く雪を伸べた。が、重量がかかるか、
引く手に幽に脈を打つ。その二の腕、顔、襟、頸、膚に白い処は云うまでもない、袖、褄....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
どってごらんに入れます」 先生を圧迫して、自分が放課を宣告し、右の手を差す手、
引く手にして足踏みおかしくはじめると、乳母の膝なる登が笑いました。 登様が笑い....
「源氏物語」より 著者:紫式部
瀬々にいださんなでものを身に添ふかげとたれか頼まん 『ひくてあまたに』(大ぬさの
引く手あまたになりぬれば思へどえこそ頼まざりけれ)とか申すようなことで、出過ぎた....
「錦木」より 著者:宮本百合子
一番しんがりの一群の男のささきげんでつみもなく美くしい直衣の袖を胡蝶のように舞の
引く手、さす手もあやしげにやがてその影も小さくなった時月の影の一人さまよう階をお....
「南国太平記」より 著者:直木三十五
埓《ふらち》者っ」
小太郎の顔に、さっと、血が動いた。
「何っ?」
力任せに
引く手首を、ぐっと、内へ折り曲げると共に、庄吉の手首から、頭の中まで、血の管、筋....
「落語・教祖列伝」より 著者:坂口安吾
ないナギナタの舞いのように見えて、しとやかに、やさしく、美しく、あでやかな差す手
引く手にすぎないが、この奥には無限の修錬がつまれていて、ミコサマはナギナタの奥儀....
「京鹿子娘道成寺」より 著者:酒井嘉七
変って参りまして、さすがに、自他ともに許した踊りの名手でございましょう。さす手、
引く手、そうした、手踊の初々しさ、――たしか、岩井半四郎は六十四歳でござりました....
「「生活」+「戦争」+「競技」÷0=能」より 著者:癋見鈍太郎
老船頭が櫓柄につかまって沖合の一点を白眼みつつ、悠々と大浪を乗り切る、その押す手
引く手や腰構えの姿態美は、ソックリそのまま名人の仕カタ開キであるまいか。その心境....
「赤げっと 支那あちこち」より 著者:国枝史郎
馬路の同羽春茶楼だの、四馬路の青蓮閣だのその他、劇場だの遊び場だのへ現われて客を
引く手合なのだ。この娼婦達が何んと子供っぽい迄に若く、子供さながらに元気でお喋舌....
「釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
舎者にしてはちょっと渋皮の剥《む》けたところから、茶屋を出す一、二日うちに早くも
引く手|数多《あまた》の有様だったけれど、根が浮気者にも似ずそれらの男を皆柳に風....
「欧米各国 政教日記」より 著者:井上円了
ざるをえず。ヤソ教者が神は無用無益のものを作らずと喋々するもの、全く愚民の信仰を
引く手段に過ぎざるなり。 船客中、日本人八名あり。みな曰く、過般日本より欧州へ....
「鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
丞とて、迂濶にはあしらえない。 こういう筋のいい太刀は、ほとんど、その斬る手も
引く手も見せない迅さを持っている。戛っ! とばかり、たった一度、双方の白刃が摺り....