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引返す
「引返す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
引返すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「高野聖」より 著者:泉鏡花
と額に手を。
七
「果《はてし》が無いから肝《きも》を据《す》えた、もとより
引返す分ではない。旧《もと》の処《ところ》にはやっぱり丈足《じょうた》らずの骸《....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
そくさ扉を開いて、隣の休憩室の唾壺へ突込んで、喫みさしを揉消して、太く恐縮の体で
引返すと、そのボオイを手許へ呼んで、夫人は莞爾々々笑いながら低声で何か命じている....
「海神別荘」より 著者:泉鏡花
ずつ二人、一つを一人、五個を提げて附添い出で、一人々々、廻廊の廂に架け、そのまま
引返す。燈籠を侍女等の差置き果つるまでに、女房は、美女をその上段、紅き枝珊瑚の椅....
「栃の実」より 著者:泉鏡花
提灯は持たねえもんだで。」中の河内までは、往還六里余と聞く。――駕籠は夜をかけて
引返すのである。 留守に念も置かないで、そのまま駕籠を舁出した。「おお、あんば....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
ら、鯉だ。」 と玉江が夢中で手を敲いた。 この大なる鯉が、尾鰭を曳いた、波の
引返すのが棄てた棹を攫った。棹はひとりでに底知れずの方へツラツラと流れて行く。 ....
「鷭狩」より 著者:泉鏡花
から、それに言って、心得さす事がありますから。」と軽く柔にすり抜けて、扉の口から
引返す。……客に接しては、草履を穿かない素足は、水のように、段の中途でもう消える....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
ってみましょう。いくらか燈が見えるようです。」 双方黒い外套が、こんがらかって
引返すと、停車場には早や駅員の影も見えぬ。毛布かぶりの痩せた達磨の目ばかりが晃々....
「神鷺之巻」より 著者:泉鏡花
水を見さっせえ、お前等がいった、毒虫が、ポカリポカリ浮いてるだ。…… 明神まで
引返す、これにも少年が用立った。爺さんにかわって、お誓を背にして走った。 清水....
「縁結び」より 著者:泉鏡花
かい、」 ともの優しく念を入れて、 「私は小児の時だったから、唾をつけて、こう
引返すと、台なしに汚すと云って厭がったっけ。死んだ阿母が大事にしていた、絵も、歌....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
る帯にはさみて、鷹揚に指揮するなり。 わびたりとて肯くべきにあらず、しおしおと
引返す本意なき日数こそ積りたれ。忘れぬは我ために、この時嬉しかりし楓にこそ。 ....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
のつもりだったんだが、それだもの、どうして、渡るどころの騒ぎじゃない。 さあ、
引返すとなると、線路からここまでの難儀さが思出される。難儀だって程度問題、覚悟を....
「多神教」より 著者:泉鏡花
に、廻廊の左へ遁ぐ。人々は縁下より、ばらばらとその行く方を取巻く。お沢。遁げつつ
引返すを、神職、追状に引違え、帯|際をむずと取る。ずるずる黒繻子の解くるを取って....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
庭の朧の立姿は、羽織を捨てて、鶏頭の竹に添っていた。 軽くはずして、今、手提に
引返す。帯が、もう弛んでいる。さみしい好みの水浅葱の縮緬に、蘆の葉をあしらって、....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
した。 まだ、途中の、梨の木坂を越えるあたりから降出したらしいのですが、さすが
引返すでもなかった。家数四五軒、佗しい山間の村で、弁当を使った時、雨を凌いで、簀....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
立っていられる数ではないから、止むことを得ず、思い切って気の進まないのを元の処へ
引返すと、我にもあらずおずおずして、差俯向いて、姫と、師と、その夫人とおわす縁側....