弛め[語句情報] »
弛め
「弛め〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
弛めの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「富士」より 著者:岡本かの子
につれ山は裾から濃紫に染め上って行く、華やかにも寂しい背光に、みるみる山は張りを
弛めて、黒ずみ眠って行く。なお残る茜《あかね》の空に一むれ過ぎて、また一むれ粉末....
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
経っていたことですから、たいした障りにもなるまいと思って、その結び目をやんわりと
弛めてあげました。そして、幾分上のほうにずらせたとき、いきなり貴方は、両手を眩《....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
覚悟か。」 「いえ、坂田の畜生、根もない事を、」 「馬鹿!」 と叱して、調子を
弛めて、 「も休み休み言え。失礼な、他人の壁訴訟を聞いて、根も無い事を疑うような....
「雛妓」より 著者:岡本かの子
降り積む、あの北地の奥のしら雪のように、その白さには、その果敢なさの為めに却って
弛めようもない究極の勁い張りがあった。つまんだ程の顎尖から、丸い顔の半へかけて、....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ころで田郷さん、S一字でどういうものが表わされているでしょうか」と法水は、調子を
弛めずに続けた。「第一に太陽、それから硫黄ですよ。ところが、水銀と硫黄との化合物....
「聖アレキセイ寺院の惨劇」より 著者:小栗虫太郎
無論鍵の輪形の結び目が解けるから、それから把手を何度も回転して、角軸に絡めたのを
弛めながら糸を引けば、どうだい、スルスル中へ入ってしまうだろう。そして、鍵の押金....
「琵琶伝」より 著者:泉鏡花
っとの間、大眼に見ておくれ。」 と前後も忘れて身をあせるを、伝内いささかも手を
弛めず、 「はて、肯分のねえ、どういうものだね。」 お通は涙にむせいりながら、....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
だ、と高を括って図々しや。 「ええ、そっちを引張んねえ。」 「下へ、下へ、」 「
弛めて、潜らせやい。」 「巻付けろ。」 遊軍に控えたのまで手を添えて、搦め倒そ....
「阿Q正伝」より 著者:井上紅梅
した。洋先生は追い馳けても来なかった。阿Qは六十歩余りも馳け出してようやく歩みを
弛め心の中で憂愁を感じた。洋先生が彼に革命を許さないとすると、外に仕様がない。こ....
「赤格子九郎右衛門」より 著者:国枝史郎
たものでした。 そうして本当に其決闘は私の勝に帰しました。――ハッと私が気息を
弛める。そこを狙って突いて来た。と直ぐ除けて入身になる。一髪の間に束を廻わし、「....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
閑日月の詮議よりもむしろその方をよろこんでいたのだろう。そこに父の平生抑えていて
弛めぬ克己心の発露がある。こうして父は苦行の道を択んで一生を過したといって好い。....
「人体解剖を看るの記」より 著者:海野十三
断をしたのがいけなかった。もう大丈夫と思って、それまでは張りつめていた心をすこし
弛めたのがいけなかった。それで急に頭がフラついてきたのだ。 医師はなおも胸腔の....
「笑について」より 著者:岸田国士
いでありますが、この笑いこそ人生を楽しく明るくし、又社会はこれあるがために緊張を
弛め、険しさがほぐれるのであります。ベルグソンの説によりますと、「笑いは決して感....
「取舵」より 著者:泉鏡花
たに散在したりし数十の漁船は、北るがごとく漕戻しつ。観音丸にちかづくものは櫓綱を
弛めて、この異腹の兄弟の前途を危わしげに目送せり。 やがて遙に能生を認めたる辺....
「飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
立てた。これで漸く意が済んだのであろう、お葉は勝利の笑を洩して、掴んだ手を初めて
弛めようとする時、お杉|婆が衝と寄って来て、例の凄愴い顔をぬッと突き出した。 「....