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張物
「張物〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
張物の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「城のある町にて」より 著者:梶井基次郎
乳母車なんとかと白くペンキで書いた屋根が見える。 日をうけて赤い切地を張った
張物板が、小さく屋根瓦の間に見える。―― 夜になると火の点《つ》いた町の大通り....
「岩石の間」より 著者:島崎藤村
いた。 丁度、お島は手拭で髪を包んで、入口の庭の日あたりの好いところで余念なく
張物をしていた。彼女の友達がそこへ来た時は、「これがお島さんか」という顔付をして....
「芽生」より 著者:島崎藤村
解物《ほどきもの》も、洗濯物も皆な後《おく》れて了ったと言って、家内は縁側の外へ
張物板を持出したが、狭い廂《ひさ》の下に日蔭というものが無かった。 庭の隅《す....
「家」より 著者:島崎藤村
である。 「曾根さんが先刻訪ねていらっしゃいましたよ」とお雪は入口の庭のところで
張物をしながら言った。 屋外から入って来た三吉は、妻の顔を眺めた。何時山の上へ....
「家」より 著者:島崎藤村
難かった。こうして雄々しい志を抱いて、彼は妻子の住む町を離れて行った。 お雪は
張物板を抱いて屋並に続いた門の外へ出た。三吉は家に居なかった。町中に射す十月下旬....
「大切な雰囲気」より 著者:小出楢重
かん照りの三条通りを春日へ登って行く午後三時の暑さと来ては類がない。坂道は丁度|
張物板を西日に向って立てかけてあるのと同じ角度において太陽に向っているのである。....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
。しんしと聞いていい許の息子かは慌て過ぎる、大晦日に財布を落したようだ。簇だよ、
張物に使う。……押を強く張る事経師屋以上でね。着想に、文章に、共鳴するとか何とか....
「富岡先生」より 著者:国木田独歩
出度く済んだ。田舎は秋晴|拭うが如く、校長細川繁の庭では姉様冠の花嫁中腰になって
張物をしている。 さて富岡先生は十一月の末|終にこの世を辞して何国は名物男一人....
「関牧塲創業記事」より 著者:関寛
、能く家族の注意ありて、絶えず実行を持長せり。依て此際は自ら運動の為めに、或は紙
張物、或は雪中歩行等にて運動を怠らず。且つ病者の来るを喜んで診療するを勤め、尚好....
「故郷」より 著者:井上紅梅
て、家具もあらかた調えましたが、まだ少し足らないものもありますから、ここにある嵩
張物を売払って向うで買うことにしましょう」 「それがいいよ。わたしもそう思ってね....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
時私はふと金槌で父の頭を打ったことがあった。 父は店用の帳面の表紙にする堅紙を
張物板にはってこしらえていた。私は釘を抜く金槌を手に持って、父の紙を張るのを見て....
「鷲」より 著者:岡本綺堂
びか空を仰いだ。 「角蔵はいるか。」 表から声をかけると、粗朶の垣のなかで何か
張物をしていたお豊は振りむいた。 「あれ、いらっしゃいまし。」 迎い入れられて....
「鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
れがよかろう、ということになりました。与吉の家内はいつも勝手の手伝いに来るので、
張物や洗濯も上手にします。人の噂では、商売をしていたとかいいました。器量もよくな....
「大切な雰囲気」より 著者:石井柏亭
い、立秋奈良風景を描いては猿沢池から春日へ爪先あがりのかんかん照りの坂道を「丁度
張物板を西日に向って立てかけてあるのと同じ角度に於て太陽に向って居る」と云い、又....
「五重塔」より 著者:幸田露伴
とく罵られ、癇張声に胆を冷やしてハッと思えばぐゎらり顛倒、手桶枕に立てかけありし
張物板に、我知らず一足二足踏みかけて踏み覆したる不体裁さ。 尻餅ついて驚くとこ....