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影絵
「影絵〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
影絵の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
って見た。紫色に暮れた砂の上に木部が舟を葦間《あしま》に漕《こ》ぎ返して行く姿が
影絵のように黒くながめられた。葉子は白|琥珀《こはく》のパラソルをぱっと開いて、....
「両国の秋」より 著者:岡本綺堂
見まわすと、明るい月は頭の上から二人をみおろして、露の沁み込んだ大道の上に二つの
影絵を描いていた。夜ももう更けているらしかった。 「いつも一人で帰るの」 「いい....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
らいなのがもう一人。 一陣風が吹くと、姿も店も吹き消されそうで哀な光景。浮世の
影絵が鬼の手の機関で、月なき辻へ映るのである。 さりながら、縁日の神仏は、賽銭....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
べ始める。 自分が満足だと思ったところはどこにあるのだろう。それはいわば自然の
影絵に過ぎないではないか。向こうに見える山はそのまま寛大と希望とを象徴するような....
「白妖」より 著者:大阪圭吉
にして夥しい禿山の起伏が黒々と果しもなく続くばかりでどこかこの世ならぬ地獄の山の
影絵のよう。その
影絵の山の頂を縫うようにして紳士と怪我人を乗せた自動車は、いまし....
「ルバイヤート」より 著者:小川亮作
幻の走馬燈だ。 日の燈火を中にしてめぐるは空の輪台、 われらはその上を走りすぎる
影絵だ。 106 ないものにも掌の中の風があり、 あるものには崩壊と不足しか....
「火星兵団」より 著者:海野十三
は、俵のような形をしていた。うす桃色の光が、そこのところだけ影になる。つまり俵の
影絵を見ているような工合だった。
「な、なんだろう、あれは……」
千二は、鉄管....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
沈んだ藤色のお米の羽織が袖をすんなりと墓のなりにかかった、が、織だか、地紋だか、
影絵のように細い柳の葉に、菊らしいのを薄色に染出したのが、白い山土に敷乱れた、枯....
「怨霊借用」より 著者:泉鏡花
そうまでもない。あの下の事を言うのである。閨では別段に注意を要するだろう。以前は
影絵、うつし絵などでは、巫山戯たその光景を見せたそうで。――御新姐さん、……奥さ....
「一週一夜物語」より 著者:小栗虫太郎
たの土が見えない。しかし、夜は美しい。更紗を洩れる灯、昼間は気付かなかった露台の
影絵、パタンやブルマンの|喧囂たる取引は、さながら、往時バグダッドの繁栄そのもの....
「画室談義」より 著者:上村松園
り使わない私は、夜分など壁へ自分の影を映してそれを参考にしてポーズをとるのです。
影絵というものは全体の姿だけ映って、こまかい線は映りませんから形をとるのに大へん....
「京のその頃」より 著者:上村松園
あって、そこから小さな橋伝いに床几に御馳走を搬んで行く、芸妓や仲居やの行き来する
影絵のような眺めも又ないものではあった。 そうした床几の彼方此方には、魚釣りが....
「快走」より 著者:岡本かの子
陽は既に西に遠退いて、西の空を薄桃色に燃え立たせ、眼の前のまばらに立つ住宅は
影絵のように黝ずんで見えていた。道子は光りを求めて進むように、住宅街を突っ切って....
「宝永噴火」より 著者:岡本かの子
。稲妻は火の口より噴上る火焔と連って綾手の網になったりした。手前の小さい愛鷹山が
影絵になって輪廓を刻んで見せた。 十一月十日の朝、地震と共にどこともなく鳴動が....
「ベートーヴェンの生涯」より 著者:ヴェーゲラーフランツ・ゲルハルト
だけ多くを君に書けないのが残念だ。僕は床についているのだ。 君のロールヒェンの
影絵をいつでも僕は持っている。それを君にいうのは、僕は若い頃、僕にとって貴く親し....