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彼方此方
「彼方此方〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
彼方此方の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
そこは、帝都のあっちこっちを見下ろすに、可也いい場所だった。眺めると、帝都の
彼方此方には、三四ヶ所の火の手が上っていた。 次の爆弾が、空から投げ落とされる....
「河明り」より 著者:岡本かの子
が往き来した。殊に夕暮前は泊りの場所へ急ぐ船で河は行き詰った。片手に水竿を控え、
彼方此方に佇んで当惑する船夫の姿は、河面に蓋をした広い一面板に撒き散した箱庭の人....
「灰燼十万巻」より 著者:内田魯庵
傷心の惨状に感慨禁ずる能わず、暫らくは焼けた材木の上を飛び/\、余熱に煽られつゝ
彼方此方に佇立低徊していた。其中に面会者があると云って呼びに来たので、何の書断片....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
。 もとより当のない尋ね人。どこへ、と見当はちっとも着かず、ただ足にまかせて、
彼方此方、同じ処を四五|度も、およそ二三里の路はもう歩行いた。 不祥な言を放つ....
「梵雲庵漫録」より 著者:淡島寒月
作った馬の首だけを括り付け、それに跨ったような格好で鞭で尻を叩く真似をしながら、
彼方此方と駆け廻る。それを少し離れた処で柄の付いた八角形の眼鏡の、凸レンズが七個....
「黄金の腕環」より 著者:押川春浪
は無く、彼女は何んでも約束通り探検を果そうと思う一心に小さな角燈の光に路を照して
彼方此方と歩いて居る内に森林の入口から凡そ四五町も来たと覚しき頃、前方に当り一個....
「好きな髷のことなど」より 著者:上村松園
分をそっくりそのまま写し取ったわけではありません。私の写生の仕方がいつもそうで、
彼方此方から部分々々のいい処をとってはそれを綜合するというやり方で、武子さんにも....
「取返し物語」より 著者:岡本かの子
前がき いつぞやだいぶ前に、比叡の山登りして阪本へ下り、琵琶湖の岸を
彼方此方見めぐるうち、両願寺と言ったか長等寺と言ったか、一つの寺に『源兵衛の髑髏....
「京のその頃」より 著者:上村松園
妓や仲居やの行き来する影絵のような眺めも又ないものではあった。 そうした床几の
彼方此方には、魚釣りがあったり馬駆け場があったり、影絵、手妻師があったり、甘酒や....
「藤十郎の恋」より 著者:菊池寛
な風俗をした二十五六の男は、万太夫座の若太夫であった。彼は、先刻から酒席の間を、
彼方此方と廻って、酒宴の興を取持っていたが、漸く酩酊したらしい顔に満面の微笑を湛....
「久保田米斎君の思い出」より 著者:岡本綺堂
松竹系といえば、帝劇を除いて東京の有名な劇場は皆そうなのですから、一時は米斎君も
彼方此方の芝居を掛持で、随分お忙しかったようです。三越の方も大正五年頃に御引きに....
「炭焼長者譚」より 著者:喜田貞吉
寺の遺蹟というのがある。山によった所で、かつては大きな寺院があったとみえて、今も
彼方此方の山腹の岩壁に彫刻した大小幾多の仏像が、或いは破壊されたり、或いは半ば土....
「チベット旅行記」より 著者:河口慧海
間に青々と快き光を放ち、その間には光沢ある薄桃色の蕎麦の花が今を盛りと咲き競う、
彼方此方に蝴蝶の数々が翩々として花に戯れ空に舞い、雲雀はまた華蔵世界の音楽師は我....
「活人形」より 著者:泉鏡花
に伸びたる夏草を露けき袖にて押分け押分けなお奥深く踏入りて忍び込むべき処もやと、
彼方此方を経歴るに、驚くばかり広大なる建物の内に、住む人少なければ、燈の影も外へ....
「雨の宿」より 著者:岩本素白
った。目を瞑ったまま近くの寺々を思い浮べて見たが、さてどの辺とも分らない。やがて
彼方此方、音色の違った、然し同じくやや高い鐘の音が、入交って静かに秋雨の中に響い....