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「往還〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

往還の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
樗牛の事」より 著者:芥川竜之介
それからあすこへまわったかと思う。あいにくの吹き降りで、不二見村《ふじみむら》の往還から寺の門まで行く路が、文字通りくつを没するほどぬかっていたが、その春雨にぬ....
とむらい機関車」より 著者:大阪圭吉
ン日ああしてあの奥の間へ通ずる障子の隙間から、まるで何者かを期待するかの様に表の往還を眺め暮している事。そうした事から、どうやら彼女は、何か気味の悪い片輪者では....
母子叙情」より 著者:岡本かの子
いう好みが、元来、彼に潜んでいるためか、探り兼ねるような無表情な声で云って、広い往還を畑地の中へ折れ曲った。其処の蓬若芽を敷きつめた原へ、規矩男は先にたって踏み....
海神別荘」より 著者:泉鏡花
お国でたとえは煩かしい。……おお、五十三次と承ります、東海道を十度ずつ、三百度、往還りを繰返して、三千度いたしますほどでございましょう。 美女 ええ、そんなに。....
栃の実」より 著者:泉鏡花
ますか。」「何、帰りの支度でゃ、夜嵐で提灯は持たねえもんだで。」中の河内までは、往還六里余と聞く。――駕籠は夜をかけて引返すのである。 留守に念も置かないで、....
売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
、五日も七日もこう降り続くと、どこの道もまるで泥海のようであるから、勤人が大路の往還の、茶なり黒なり背広で靴は、まったく大袈裟だけれど、狸が土舟という体がある。....
オフェリヤ殺し」より 著者:小栗虫太郎
ような空――街中はひっそり閑としていて、塔があちこちに聳え、時折は家毎の時計が、往還の真中でさえ聴こえる事が御座います。ねえ法水様、北イタリー特有の南風が吹き出....
錦紗」より 著者:犬田卯
ていなかったのである。おそらくここまで来るうちに――家を出て五六軒の農家のならぶ往還を通り、畑地へ出て、沼岸へ坂を下りる頃落したのかも知れぬ。彼女はそう考え直し....
荒蕪地」より 著者:犬田卯
た酒倉、白亜塗りの土蔵、石造のがっしりした穀倉、物置、その他雑多な建物の一方に、往還に向って構えられた大きな母家……槻や欅や、裏山に繁る杉の古木に囲まれて、この....
」より 著者:犬田卯
まさか旨かっぺから。」 そのとき「兄ちゃんが来てらア」と叫んでおちえとヨシ子が往還の方から飛びこんで来た。 「ほら、兄ちゃんだ――兄ちゃん、大きい兄ちゃん――....
沼畔小話集」より 著者:犬田卯
の廃屋同様のM公の家が、どうしたのか立派(?)に修繕せられて、やや人の住居らしく往還に背を向けて立っている。M公も「堅気」になったのかしら、女房でももらって「身....
五色蟹」より 著者:岡本綺堂
がっているのは、その竹垣の外に細い路があって、それが斜にうねって登って、本街道の往還へ出る坂路につながっていることであった。もし何者かがその坂路を降りて来て、さ....
河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
輪にしたのを、引絞りながら、松の幹をよじ上った勢のよさといったら。……それでも、往還の路へ向かない、瓜畠の方の太い枝へ、真中へ掛けて、両方へ、幻の袖のような輪を....
武士を夷ということの考」より 著者:喜田貞吉
ず、九州海岸の防衛すら、遠く東人を派してこれに当らしむるほどとなれり。しかもその往還すこぶる煩多きがゆえに、一時これを廃して筑紫人を用いしが、辺防たちまちにして....
とと屋禅譚」より 著者:岡本かの子
ってしまえば自省も考慮ももうそれまでだった。昼の日本堤は用事のある行人で遊里近い往還とも思われなかった。藁葺屋根を越して廓の一劃の密集した屋根が近々と望まれた。....