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微醺
「微醺〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
微醺の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「開化の良人」より 著者:芥川竜之介
《かん》を尽した後で、彼の屋敷を辞した時も、大川端《おおかわばた》の川風に俥上の
微醺《びくん》を吹かせながら、やはり私は彼のために、所謂《いわゆる》『愛《アムウ....
「少年」より 著者:芥川竜之介
《ひとつか》みの海髪《うご》を枕にしためじの刺身《さしみ》を見守っていた。すると
微醺《びくん》を帯びた父は彼の芸術的感興をも物質的欲望と解釈したのであろう。象牙....
「眉山」より 著者:太宰治
》の頃だった。僕は新宿の駅前で、肩をたたかれ、振り向くと、れいの林先生の橋田氏が
微醺《びくん》を帯びて笑って立っている。 「眉山軒ですか?」 「ええ、どうです、....
「人間失格」より 著者:太宰治
ね、むかしペルシャのね、まあよそう、悲しみ疲れたるハートに希望を持ち来すは、ただ
微醺《びくん》をもたらす玉杯なれ、ってね。わかるかい」 「わからない」 「この野....
「老妓抄」より 著者:岡本かの子
でに響いたが、彼女の心の中は不安な脅えがやや情緒的に醗酵《はっこう》して寂しさの
微醺《ほろよい》のようなものになって、精神を活溌にしていた。電話器から離れると彼....
「残されたる江戸」より 著者:柴田流星
紅白の幔幕旗幟のたぐいをまでたてて、船では三味線幾挺かの連れ弾きにザザンザ騒ぎ、
微醺の顔にほんのりと桜色を見せて、若い女の思い切り高々に掲げた裳から、白い脛惜気....
「川端柳」より 著者:豊島与志雄
は、A老人に逢った時、彼と一緒に万引して歩いた夢の話をした。 その時、A老人は
微醺を帯びていた。※の粗髯をしごきながら、黙って私の話をきいていたが、しまいにこ....
「失われた半身」より 著者:豊島与志雄
ではない筈だが、なにか病的なものが感ぜられた。アルコールがまだ体内に残っていて、
微醺が意識されるのだったが、宿酔発散後に往々経験する、消耗性の虚脱感まで伴ってい....
「庶民生活」より 著者:豊島与志雄
銭湯の往き帰りとか、散歩のついでなどに、私はしばしばこの峠の茶屋に立ち寄って、
微醺を楽しんだものである。 或る時、この店の前、歩道と車道とに跨って、道路修理....
「岷山の隠士」より 著者:国枝史郎
帝を真中に顯官が竝んだ。 紗帽を冠り、白紫衣を着け、飄々と李白が現われた。勿論
微醺を帯びていた。 座に就くと筆を握り、一揮して蕃書を完成した。 まず唐音で....
「明日は天気になれ」より 著者:坂口安吾
さんは犬猫の大経験者であるから、 「コリーは高価な犬ですよ」 と取りなしたが、
微醺をおびている文六さんは受けつけない。 「安吾さんの買い物には乱世の兆があるね....
「二葉亭余談」より 著者:内田魯庵
本業であった乎、どちらとも解らない家であった。 秋の一夜偶然尋ねると、珍らしく
微醺を帯びた上機嫌であって、どういう話のキッカケからであったか平生の話題とは全で....
「四十年前」より 著者:内田魯庵
比谷の原を隔てて鹿鳴館の白い壁からオーケストラの美くしい旋律が行人を誘って文明の
微醺を与えた。今なら文部省に睨まれ教育界から顰蹙される頗る放胆な自由恋愛説が官学....
「十日の菊」より 著者:永井荷風
くりながら、空腹《すきっぱら》に五、六杯|引掛《ひっか》けたので、忽《たちま》ち
微醺《びくん》を催した様子で、「女の文学者のやる演説なんぞ、わざわざ聴きに行かな....
「金山揷話」より 著者:大鹿卓
ないような思いを重ねる仕儀だった。森山も私も言葉すくなくなった。 もちろん私の
微醺はまもなく醒めてしまった。私には、一昨日の朝に定山渓で見かけた傷病兵の白衣姿....