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忘る
「忘る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
忘るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「河童」より 著者:芥川竜之介
《キリストきょう》、仏教、モハメット教、拝火教《はいかきょう》等の諸宗あることを
忘るるなかれ。
問 君自身の信ずるところは?
答 予は常に懐疑主義者なり。
....
「浜菊」より 著者:伊藤左千夫
ろげ》に庭の様子が判る。狭い庭で軒に迫る木立の匂い、苔《こけ》の匂い、予は現実を
忘るるばかりに、よくは見えない庭を見るとはなしに見入った。 北海の波の音、絶え....
「初めて見たる小樽」より 著者:石川啄木
はや新らしき声の死んだ時、人がいたずらに過去と現在とに心を残して、新らしき未来を
忘るるの時、保守と執着と老人とが夜の梟《ふくろう》のごとく跋扈《ばっこ》して、い....
「化銀杏」より 著者:泉鏡花
よとばかりに自ら恐れ、自ら悼み、且つ泣き、且つ怒り、且つ悔いて、ほとんどその身を
忘るる時、 「お貞。」 と一声、時彦は、鬱し沈める音調もて、枕も上げで名を呼び....
「琵琶伝」より 著者:泉鏡花
って今満身の血を炙るにぞ、面は蒼ざめ紅の唇|白歯にくいしばりて、ほとんどその身を
忘るる折から、見遣る彼方の薄原より丈高き人物|顕れたり。 濶歩埋葬地の間をよぎ....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
見るに似たり。 小親と顔を見合せぬ。 「よく覚えておいでだね。」 いかでわれ
忘るべき。 いかで忘らるべき。時々起る小親が同一病の都度、大方ならずわれは胸い....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
、水紅色、水浅葱、ちらちらと波に漏れて、夫人と廉平が彳める、岩山の根の巌に近く、
忘るるばかりに漕ぐ蒼空。魚あり、一尾|舷に飛んで、鱗の色、あたかも雪。 ==篇中....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
も、二人|斉しく涙を湛えて、差俯向いて黙然とした。人はかかる時、世に我あることを
忘るるのである。 框に人の跫音がしたが、慌しく奥に来て、壮な激しい声は、沈んで....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
のが形を示し、棹に砕けてちらめく火影櫓行く跡に白く引く波、見る者として皆な暑さを
忘るる物なるに、まして川風の肌に心地よき、汗に濡れたる単衣をここに始めて乾かした....
「ファラデーの伝」より 著者:愛知敬一
しようとの希望であった。しかし実際においては、この日こそファラデーに取って、生涯
忘るべからざる日となったので、その事はすぐ後に述べることとする。 結婚のすぐ前....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
りなのを……謹三は一人その花吹く天――雲井桜を知っていた。 夢ではない。……得
忘るまじく可懐しい。ただ思うにさえ、胸の時めく里である。 この年の春の末であっ....
「清心庵」より 著者:泉鏡花
これと異るなし。悪熱のあらむ時三ツの水のいずれをか掬ばんに、わが心地いかならむ。
忘るるばかりのみはてたり。 「うんや遠慮さっしゃるな、水だ。ほい、強いるにも当ら....
「迷信解」より 著者:井上円了
を見るように思うのである。例えば、母親が愛児を失い、毎日毎夜これを心頭に浮かべて
忘るることなきときは、その姿が自然に目に触れ、夢のごとくに見ることがある。しかる....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
り。葉書の郵税はチリの六銭にして、わが二銭五厘に相当す。なお一つチリの特色として
忘るべからざる一事は、紙幣の垢に染みて黒色を帯び、その紙面には幾千万の黴菌を有す....
「大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
、人間界より遠ざかる。唯、蚊の襲来の多からざると、涼風衣袂に満ちて、日中の炎塵を
忘るるとは、最も快適の至りにして、殊に、ここ暫くの勝負と思えば、神新に気更に張る....