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忘れ去る
「忘れ去る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
忘れ去るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
疑惑があって、それには、彼女が一生を賭《と》してまでもと思い、片時《かたとき》も
忘れ去ることのない、ひたむきな偏執が注がれていた。そして、絶えずその神秘の中に分....
「残されたる江戸」より 著者:柴田流星
児の子孫の続く間は、吾儕より初松魚を除くことはあるまいと信ずる。吾儕より初松魚を
忘れ去ることはなかろうと言いきれる。 初松魚! 初松魚! 汝の名は常に新しい誇....
「油絵新技法」より 著者:小出楢重
何かが癪に障る時、苛々する時このシグナルの青色の光を眺めると一時この世の何物をも
忘れ去ることができる。それは私にとってのカルモチンである。 昔の散髪屋とか湯屋....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
それがためにお雪ちゃんは、久助さんのことも、北原君のことも、白骨谷のことも、一切
忘れ去るほどに緊張を感じていたことは事実です。 そうして、翌朝を待っていてみる....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
風采と面《かお》ぶれとです。神尾は自分の三ツ目の面を曝《さら》すことの不快を全く
忘れ去るほどの興味で、一座の奴を見渡しているのです。介添役には金助改め鐚助《びた....
「菜穂子」より 著者:堀辰雄
ひとつき》の余になって、社の用事などでいろいろと忙しい思いをし、それから何もかも
忘れ去るような秋らしい気持ちのいい日が続き出してからも、まるで菜穂子を見舞ったの....
「性格批判の問題」より 著者:豊島与志雄
ているのは、人物性格のそれである。人物性格が現われていない作品を、吾々は最も多く
忘れ去る。 ドン・キホーテやハムレットのような典型は別としても、少しく文学に親....
「文学以前」より 著者:豊島与志雄
すことであって、私一個の嗜好か反撥かが加わっているかも知れないが、恐らくあすこを
忘れ去る者は少いだろう。 然るに、そこが、どういう風に書かれているか、煩をいと....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
おりの者になろうとみずから誓った。しかし彼女はいかにつとめても、すぐにはその傷を
忘れ去ることができなかった。ちょうど回復期と同じだった。二人の間には気まずい隔て....
「復讐」より 著者:豊島与志雄
こと甚だ少い。少いのは、覚えていることが少いのであって、本当は、意識しないうちに
忘れ去るのではあるまいか。夢に出て来てもよい筈の人々はずいぶん多いのである。 ....
「故郷」より 著者:井上紅梅
た時、わたしは内々彼を笑っていた。彼はどうしても偶像崇拝で、いかなる時にもそれを
忘れ去ることが出来ないと。ところが現在わたしのいわゆる希望はわたしの手製の偶像で....
「光は影を」より 著者:岸田国士
く、彼の手に再び戻つて来ようとは思えぬ小萩、その小萩なる一女性を、どうして彼は、
忘れ去ることができないのか? それもまた、彼一流の自尊心からであろうか? まさ....
「南国太平記」より 著者:直木三十五
って、はじめて、これを発するこそ、大丈夫の覚悟と申すものじゃ。三年名を現さずんば
忘れ去るのが人の常じゃ。二百五十年、修法の機がなければ、雑言、悪口、当り前じゃ。....
「城」より 著者:カフカフランツ
夜間、人工の光の下で聴取し、しかも聴取のすぐあとであらゆるみにくさを眠りのうちに
忘れ去るかもしれないという可能性を期待して聴取する、ということだけを目的としてい....
「宝永噴火」より 著者:岡本かの子
禅思惟に心身を浸した。全く取りかかりの無い空間に向い、疑いそのものとなってわれを
忘れ去るのは無限の谷底へ向けて崖から手を放すような不気味さがあった。しかし、思い....