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忘我
「忘我〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
忘我の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
いう欲念、そしてそれができそうな期待が葉子を未練にした。それからというもの葉子は
忘我渾沌《ぼうがこんとん》の歓喜に浸るためには、すべてを犠牲としても惜しまない心....
「さようなら」より 著者:田中英光
い川面に白いボオトを浮べ、自分の心や身体を吸いよせ、飽和した満足感で揺り動かし、
忘我の陶酔に導いてくれる、そのひとを前にし、軽くオオルを動かしている幻想のよみが....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
を慮らない。二人は単に愛のしるしを与えることと受け取ることとにのみ燃える。そして
忘我的な、苦痛にまでの有頂天、それは極度に緊張された愛の遊戯である。その外に何物....
「河明り」より 著者:岡本かの子
る感覚の蓋を開いて、新奇な空気を吸収する、その眠たいまでに精神が表皮化して仕舞う
忘我の心持ちに自分を托した。一つにはこの庭と茶室の一劃は、蔵住いと奥倉庫の間の架....
「残されたる江戸」より 著者:柴田流星
か。 蘇子、白居易が雅懐も、倶利迦羅紋紋の兄哥が風流も詮ずるところは同じ境地、
忘我の途に踏み入って煩襟を滌うを得ば庶幾は已に何も叶うたのである。 浅草趣味 ....
「俳句の精神」より 著者:寺田寅彦
にすべてを忘却して高山に登る心の自由は風流である。営利に急なる財界の闘士が、早朝
忘我の一時間を菊の手入れに費やすは一種の「さび」でないとは言われない。日常生活の....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
らともなく唄い出す「海賊歌」の合唱。 男の円套と原始的な女装の点綴。 情熱と
忘我と、above all, 太陽――SI! 闘牛はいま始まろうとしている。 ....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
いとめている、安ホテルの椅子みたいに角張ったあめりか女とのあいだに、ルウレットに
忘我して顔を真赤にしてる私の妻を見つけて、急いでそのことを言い出したのである。 ....
「温浴」より 著者:坂口安吾
かし、うすい木でつくられた普通の沸し風呂では、冷めるのが早く、たけば熱く、こんな
忘我の状態を経験することはできなかった。 例年の冬は仕事ができない習慣であった....
「科学者と夜店商人」より 著者:海野十三
えると脳細胞中の電子の運動がすこし変態性を帯びて来るそうだ。そんなときにうっかり
忘我的研究をつづけていると、電子はその変態性をどんどん悪化させ、遂には或る臨界点....
「なよたけ」より 著者:加藤道夫
縁舞台には緑色の薄紗が幾重にも垂れ下っている。 その奥の方から、竹を伐る斧の音が
忘我の時を刻むごとく、ひびいている。…… 前舞台、左手より旅姿の石ノ上ノ文麻呂が....
「宝永噴火」より 著者:岡本かの子
ら、思わずその三昧とかは得られるのか。だが私はこどもの時分から神経は丈夫で、あの
忘我的な脅迫観念とか、幻覚とかはついぞ縁の無い性分だ。私はこの聖者の伝記を調べて....
「かもめ」より 著者:神西清
というわけ。一仕事すますと、芝居なり釣りなりに逃げだす。そこでほっと一息ついて、
忘我の境にひたれるかと思うと、どっこい、そうは行かない。頭のなかには、すでに新し....
「ある完全犯罪人の手記」より 著者:酒井嘉七
音を立てて瞬間的に活動を停止する。その度に自分は、烈しい憤りの場合に生じる、あの
忘我の興奮に似たものを感じ、現世とも天国とも地獄とも判断のつかない、ただ混沌たる....
「ベートーヴェンの生涯」より 著者:片山敏彦
ず、あの幻想の神聖な旋風に運び去られていたのか?…… 私がそこへ沈み込んでいた
忘我の状態の中で、自分の心の中に形成されつつある事柄を、私はまだ少しも弁別するこ....