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念もない
「念もない〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
念もないの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「恩讐の彼方に」より 著者:菊池寛
にめでてその願い許して取らそう。束《つが》えた言葉は忘れまいぞ」と、いった。 「
念もないことでござる。一分の穴でも、一寸の穴でも、この刳貫が向う側へ通じた節は、....
「新生」より 著者:島崎藤村
内までも流れ込んで来た。
「節ちゃん、春が来るね」
と岸本は旅支度の手伝いに余
念もない節子の方を顧みて言った。節子は電燈のかげで白い襯衣《シャツ》の類なぞを揃....
「魔法修行者」より 著者:幸田露伴
はない。今日も例の通り厳冷な顔をして魔法修行の日課を如法に果そうとするほかに何の
念もない。しかし戦乱の世である。河内の高屋に叛いているものがあるので、それに対し....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
ながら、半蔵が自分の家の入り口まで引き返して来た時は、ちょうど門内の庭|掃除に余
念もない父を見た。 「半蔵が帰りましたよ。」 おまんはだれよりも先に半蔵を見つ....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
軽袗ばきの姿に、鳶口を携え、坂になった往来の道を利用して、朝早くから氷|滑りに余
念もない男の子の中には、半蔵が家の宗太もいる。 一日は一日より、白さ、寒さ、深....
「嵐」より 著者:島崎藤村
ろこびでもあった。そのころの末子はまだ人に髪を結ってもらって、お手玉や千代紙に余
念もないほどの小娘であった。宿屋の庭のままごとに、松葉を魚の形につなぐことなぞは....
「形」より 著者:菊池寛
たもらぬか。あの服折と兜とを着て、敵の眼をおどろかしてみとうござる」 「ハハハハ
念もないことじゃ」新兵衛は高らかに笑った。新兵衛は、相手の子供らしい無邪気な功名....
「岡本一平論」より 著者:岡本かの子
も仏教も、極度の真理は同じだとの主張を持って居ります。随って二重に仕えるという観
念もないのであります。ただ、目下は、キリスト教に対しては、その教理をやや研究的に....
「母の上京」より 著者:坂口安吾
ければそれまでといふ冷めたさでもないが、つまり、金がなければ、オヂサンで、貞操の
念もない代りに、行きがゝりに縛られるやうな情もない。至つて自由で、見様によれば無....
「くろん坊」より 著者:岡本綺堂
心して、彼はこの空家に蹈みとどまることにした。そうして、丸三年の今日まで読経に余
念もないのであるが、髑髏はまだ朽ちない、髑髏はまだ落ちない、髑髏はまだ笑っている....
「安吾の新日本地理」より 著者:坂口安吾
当り前のことが日本では珍しいのだ。通俗な庶民感情を押えて断行するだけの洞察力も信
念もない政治家や市長が普通だ。彼らが庶民感情を抑えつけて強行断行することは、庶民....
「中支遊記」より 著者:上村松園
などのつくろいをしている。四辺はどうあろうともそこだけはぽかぽかと陽当りよく、余
念もない女の針がひかっているのである。 物静かな京都の街なかでもこんな風にお前....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
た姿見に頬を並べた双の顔に、思わず見惚れて敷居の際。 この跫音にも心着かず、余
念もない二人の状を、飽かず視めてうっとりした。女房の何となく悚然としたのは、黄菊....
「エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
なる一群の僧侶が、王の覗いている窓のすぐ下の祭壇にかしずきながら、聖なる勤行に余
念もないのだった。王の仕事とてもやはり聖なるものであった。神聖相続権は彼の血のな....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
印し、はては遠く双眼鏡裡を逸してしまった。実君もいつか登って来て早やスケッチに余
念もない。二人はゆっくり落ちつきたいと思って四辺を見廻したが、狭い頂上に錯立した....