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思わず知らず
「思わず知らず〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
思わず知らずの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
けでは解《げ》せませんが、一体何が居ったのでございます。」
この時は平太夫も、
思わず知らず沙門《しゃもん》の調子に釣り込まれてしまったのでございましょう。こう....
「路上」より 著者:芥川竜之介
れて、次第に会場の方へ押されて行ったが、何気《なにげ》なく途中で後を振り返ると、
思わず知らず心の中で「あっ」と云う驚きの声を洩《も》らした。
....
「或る女」より 著者:有島武郎
なった時、葉子はその人のかたわらにでもいるように恍惚《うっとり》とした顔つきで、
思わず知らず左手を上げて――小指をやさしく折り曲げて――軟《やわ》らかい鬢《びん....
「或る女」より 著者:有島武郎
ててやりたい衝動がむずむずとわいて来た。その頭のまわりにあてがわるべき両手の指は
思わず知らず熊手《くまで》のように折れ曲がって、はげしい力のために細かく震えた。....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
ていいのか悪いのかを決しかねて、たくましい意志と冷刻な批評とが互いに衷に戦って、
思わず知らずすべてのものに向かって敵意を含んだ君のあの面影だった。私は筆を捨てて....
「親子」より 著者:有島武郎
たって、相手に腹の細さを見透かされはしまいかと思う事もあった。彼はそういう時には
思わず知らずはらはらした。何処までも謹恪で細心な、そのくせ商売人らしい打算に疎い....
「耽溺」より 著者:岩野泡鳴
が、実際、その時になっての用意があるわけでもないから、少し引け気味があったので、
思わず知らず、「その時ア私がどうともして拵えますから、御安心なさい」と附け加えた....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
ぼとぼと杖に縋って、向う下りに、この姿が、階子段に隠れましたを、熟と視ると、老人
思わず知らず、べたりと坐った。 あれよあれよ、古狐が、坊主に化けた白蔵主。した....
「化銀杏」より 著者:泉鏡花
、お召が、阿波縮で、浅葱の唐縮緬の兵児帯を〆めてたわ。 どうだい、芳さん、私も
思わず知らず莞爾したよ、これは帰って来たのが嬉しいのより、いっそその恰好が可笑か....
「阿Q正伝」より 著者:井上紅梅
して言ったことはなかったが、今度は正義の憤りでもあるし、復讎の観念もあったかた、
思わず知らず出てしまった。 ところがこの禿の奴、一本のニス塗りのステッキを持っ....
「故郷」より 著者:井上紅梅
日の午後、わたしは昼飯を済ましてお茶を飲んでいると、外から人が入って来た。見ると
思わず知らず驚いた。この人はほかでもない閏土であった。わたしは一目見てそれと知っ....
「怪異黒姫おろし」より 著者:江見水蔭
けても、少しも思うように痒さは癒えぬのであった。 「あッ、もう、どうしようのう」
思わず知らず、口走った。大名の権威も、女子の謹慎も、共に忘れて了ったのであった。....
「壁の眼の怪」より 著者:江見水蔭
へ覗く様にして出張っている大蝦蟇形の岩があった。それに乗って直芳が下を見た時に、
思わず知らず口走ったのであった。それは緑の水中に、消え残る雪の塊とも擬うべき浴泉....
「押しかけ女房」より 著者:伊藤永之介
世の紅い顔がのぞいていた。 「今来たよ」 はじけるようにふくらむ胸をおさえて、
思わず知らず唸つた佐太郎の眼に、父母の顔に重つて、初世の紅い顔が焼きついて来た。....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
っておりました。やがて夫は歩いて来ました。そして運悪く、横町から出て来た若い女に
思わず知らず振り向きました。夫の不行跡を待ちもうけただけに、そんな些細なことでも....