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恍然
「恍然〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
恍然の前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「藤十郎の恋」より 著者:菊池寛
(藤十郎はふと、お梶の顔を見る。色のくっきりと白い細面に、眉の跡が美しい。最初は
恍然としていた藤十郎の瞳が、だんだん険しく険しくなってくる。お梶は、藤十郎の不思....
「狂人は笑う」より 著者:夢野久作
晶のように凝り沈み、神気が青空のように澄み渡って、いつ知らず聖賢の心境に瞑合し、
恍然として是非を忘れるというのです。その神々しい気持よさというものは、一度|味っ....
「極楽」より 著者:菊池寛
然たる光明が満ち満ちて居る。空からは縹緲たる天楽が、不断に聞えて来る。おかんは、
恍然としてそうした風物の中に、浸り切って居た。楽しい日が続いた。暑さも寒さも感じ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
十 宇津木兵馬は、ひとり温泉の中に仰向けになって悠々《ゆうゆう》と浸って、
恍然《うっとり》と物を考えているところへ、不意に後光がころげ込んで来ました。 ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
書き立てない方がよかろうと思う。その時分の人を天上界の夢の国へ持って行くほどに、
恍然魅了《こうぜんみりょう》した異国情調を細かく描写してみたところで、その時分の....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
「恋慕」を聞き、すががきを聞き、「岡崎女郎衆」を聞いているうちに、いつかは知らず
恍然《うっとり》として、夢とうつつの境に抱き込まれました。いいあんばいに、ほとん....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
み、馬車人力車の轟きさながらに地獄の如く、各種商店の飾りあだかも極楽の荘厳の如く
恍然として東西を弁ぜず、乱雑して人語を明らめがたし。我自ら我身を顧りみれば孑然と....
「明治劇談 ランプの下にて」より 著者:岡本綺堂
けたのを仰ぎ見た時には、花といおうか紅葉といおうか、わたしらのような子供でも実に
恍然として足を停めずにはいられなかった。つまり今日の絵葉書屋とおなじ理窟であるが....
「露伴の出世咄」より 著者:内田魯庵
るような感興で胸に響くものはなかった。が、『風流仏』を読んだ時は読終って暫らくは
恍然として珠運と一緒に五色の雲の中に漂うているような心地がした。アレほど我を忘れ....
「五重塔」より 著者:幸田露伴
く、まあ何でも好いわ、飯でも食って仕事に行きやれ、と和しく云われてますます畏れ、
恍然として腕を組みしきりに考え込む風情、正直なるが可愛らし。 清吉を出しやりた....
「三国志」より 著者:吉川英治
孔明もそこにいたが、二人のその話には、何もふれて行かなかった。独り船窓に倚って、
恍然と、外の水や空を見ていた。 三江をさかのぼること七、八十里、大小の兵船は蝟....
「蛾」より 著者:室生犀星
をみつめていると、しんとした気になって、からだを羽毛か何かで撫でられているような
恍然した気もちになって了うのだった。内儀は内儀で、その目の光を艶やかにそっと微笑....