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悽
「悽〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
悽の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
互いに溶け合って、のどやかな朝の空気の中にぽっかりと、葉子という世にもまれなほど
悽艶《せいえん》な一つの存在を浮き出さしていた。その存在の中から黒い焔《ほのお》....
「冬の日」より 著者:梶井基次郎
いとしても駄目です。わたしは何時間も眠れません。」 堯はそれを読んである考えに
悽然《せいぜん》とした。人びとの寝静まった夜を超えて、彼と彼の母が互いに互いを悩....
「両国の秋」より 著者:岡本綺堂
れ付きか、あるいは多年もてあそんでいる蛇の感化か、いずれにしてもお絹が蛇のような
悽愴《ものすご》い眼をもっていることは争われなかった。お絹が天明五年|巳年《みど....
「玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
くだされ」 こう言い切って、彼女は明るい月をみあげた。きのうの稲妻に照らされた
悽愴《ものすご》い顔とは違って、今夜の月を浴びた彼女の清らかな神々《こうごう》し....
「失楽園殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
れてピインと張るので、蝶形を引いて瓦斯の栓を開きます。そして、真空の中に噴出する
悽じい力が、口元の短剣を発射させたのでした。然し、計量器のねじが閉っているので、....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
リと一枚の日附を落とし、やがて、東の空が、だんだんと白みがかってきた。あまりにも
悽惨なる暁だった。生き残った帝都市民にとって、それは残酷以外の何物でもない夜明け....
「海底大陸」より 著者:海野十三
の実際の指揮者である事務長クーパーは、まどのすきまから、甲板上に展開してゆくこの
悽愴な光景に魅せられたように、じっと見つめていた。いまやメリー号上の全員は、まく....
「宇宙尖兵」より 著者:海野十三
、一般の展望を禁止しているのですわ。地球上の奇観とちがって、宇宙の風景はあまりに
悽愴で、見つけない者が見ると、一目見ただけで発狂する虞れがあるのですわ。ですから....
「病房にたわむ花」より 著者:岡本かの子
。あわてた視線が途惑って、窓辺の桜に逸れました。私はぞっとしました。その桜の色の
悽愴なのに。 ずっと前の或夜、私は友の家の離れの茶室に泊りました。私は夜中にふ....
「鐘ヶ淵」より 著者:岡本綺堂
に、なにさまこの深い淵の底には何かの秘密が潜んでいるらしく思われて、言い知れない
悽愴の気が諸人の胸に冷たく沁み渡った。 きょうは川御成であるから、どういうこと....
「こま犬」より 著者:岡本綺堂
、あまり高くない。なんだか池の底でむせび泣くような悲しい声で、それを聞くと一種|
悽愴の感をおぼえるそうだ。小袋ヶ岡の一件というのは大体まずこういうわけで、それが....
「地虫」より 著者:小栗虫太郎
思うと、屍体は、激しいうねりを立てて水底に沈んでゆく。 すると血の帯に、見るも
悽惨な渦が捲き起って、いくつとなく真赤な螺旋のようなものが直立してゆくのだ。 ....
「人魚謎お岩殺し」より 著者:小栗虫太郎
バラバラであるけれども、今か今かと待つ焦らだたしさは、ひとしお末期の伊右衛門に、
悽愴な気魄を添えるのだった。 しかし、その頃奈落の中で、法水は、六人を前に何事....
「オフェリヤ殺し」より 著者:小栗虫太郎
」 と息の間を置かずに、法水は云い続けた。 「たしかに、あれからうけた印象は、
悽愴の極みだったよ、まさにその超自然たるや、力学の大法則を徹底的に蹂躪している。....
「南極の怪事」より 著者:押川春浪
いてビリビリと船の何物にか乗りあぐる音、波の甲板に打ちあぐる音、風の檣と闘う音、
悽愴とも何んとも云うべからず、余は恐怖のために一時気絶せんとせしが、かくてあるべ....