惨苦[語句情報] »
惨苦
「惨苦〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
惨苦の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「淫売婦」より 著者:葉山嘉樹
た。字義通りに彼女は瘠せ衰えて、棒のように見えた。 幼い時から、あらゆる人生の
惨苦《さんく》と戦って来た一人の女性が、労働力の最後の残渣《ざんさい》まで売り尽....
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
ろう。いつか、兄夫婦の間に始まるであろう争《いさか》いの余波が、彼女にどのような
惨苦をもたらすか、知れたものではないのである。すると時江には、もうこのうえ手段と....
「新生」より 著者:島崎藤村
た労苦を思いやる市民の心がその日まで続いて来た。彼の耳にする話は一つとして戦争の
惨苦を語らないものは無かった。開戦以来、五六十万の仏蘭西人は既に死んでいるとの話....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
の人間には殆ど想像することも出来ない程の忌わしいものであった。夜もすがらに泣いて
惨苦を忍んだ者に対して、花鳥はその翌日必ず一杯のうなぎ飯をおごってくれた。 三....
「俊寛」より 著者:菊池寛
うしたことを口にする勇気も無くしていた。その上に、都会人である彼らに、孤島生活の
惨苦が、ひしひしと迫ってきた。毎日のように、水に浸した乾飯や、生乾きの魚肉のあぶ....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
、古びた能衣裳みたいな人達といっしょに暮してゆけるもんですか。実際父は、僕に人間
惨苦の記録を残させる――それだけのために、細々と生を保ってゆく術を教えてくれたの....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
題になっている。 といって、南へゆけばコンゴの「類人猿棲息地帯」、そこではこの
惨苦を繰りかえすにすぎない。してみると、北端にあたる大絶壁へ――いまアメリカ地学....
「運命」より 著者:幸田露伴
せず樹せずして終るに至る。嗚呼又奇なるかな。しかも其の因縁の糾纏錯雑して、果報の
惨苦悲酸なる、而して其の影響の、或は刻毒なる、或は杳渺たる、奇も亦太甚しというべ....
「転機」より 著者:伊藤野枝
の身の上の事でも話しているような無関心な態度を、私は不思議な気持で見ていた。彼は
惨苦のうちにこの土地に未練をもって、今もなお池の中に住んでいる少数の人達に対して....
「人口論」より 著者:マルサストマス・ロバート
i. p. 221. この移住以前には、カルマック族の下層階級は非常な貧困と
惨苦の中に生活し、栄養を採れるものならどんな動物でも植物でもまたは根でも利用する....
「生死卍巴」より 著者:国枝史郎
見た。 顔に白布をかけている者、松葉杖を脇の下へかっの老人――いずれも人の世の
惨苦者であったが、信仰を失ってはいないと見えて、その動作にも話しぶりにも、穏かな....
「自殺を買う話」より 著者:橋本五郎
は、いったい芸術家と呼ばれる者の修行時代は、他から見るように呑気なものではなく、
惨苦そのもののような、だから、時にはやり切れないで(勿論それには色々の意味がある....
「方子と末起」より 著者:小栗虫太郎
吸をし、ぼんやりと見るまきの様は正視の出来ないものだ。刑罰か――死ぬに死ねない、
惨苦を味わいながら余生を送らねばならぬのは……。 末起も、それについて折ふし考....
「紅毛傾城」より 著者:小栗虫太郎
過去を、はじめて会うたときに、それと悟ったほど……。その、燃えるような緑の髪も、
惨苦と迫害の標章でのうて、なんであろう。そもじは、ネルチンスクの銅山にまで流れて....
「人魚謎お岩殺し」より 著者:小栗虫太郎
鬼畜の道を辿りつつあるのだ。そう判ると、かすかな嫉妬を覚えたけれども、これまでの
惨苦も懊悩も一時に消え失せて、残った白紙の眩ゆさには、何もかも忘れ果ててしまうの....