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「惰力〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

惰力の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
十円札」より 著者:芥川竜之介
こ》りの道を歩かせられるのは勿論永久の苦痛である。苦痛?――いや、苦痛ではない。惰力《だりょく》の法則はいつのまにか苦痛という意識さえ奪ってしまった。彼は毎日無....
或る女」より 著者:有島武郎
は、すぐにも物をいい出しそうに口びるさえ震えていた。葉子も今まで続けていた回想の惰力に引かされて、思わずほほえみかけたのであったが、その瞬間|燕返《つばめがえ》....
路上」より 著者:梶井基次郎
ートの平地になっている。崖は二間、それくらいであった。もし止まる余裕がなかったら惰力で自分は石垣から飛び下りなければならなかった。しかし飛び下りるあたりに石があ....
」より 著者:徳田秋声
。笹村は錘のかかったような気を引き立てて、ぽつぽつ筆を加えはじめた。やり始めると惰力で仕事がとにかくしばらくの間は進行した。時とすると、原書を翻って照合しなどし....
科学と文学」より 著者:寺田寅彦
まに器械的に文字に書き現わされるのではなくて、むしろ、紙上の文字に現われた行文の惰力が作者の頭に反応して、ただ空で考えただけでは決して思い浮かばないような潜在的....
谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
後からは、荷かつぎが一人|跟いて来る、私の辷るたびに急に下り足を停めようとしては惰力でよたよたしながら、杖を突いてどうやらこうやら踏み止まる、威勢よく先に立つの....
戦時旅行鞄」より 著者:海野十三
じゃない。今現に実測によると本船は四十ノットの快速力で走っているじゃないか」 「惰力で走っているのじゃないですか」 「そうかしらん」 といっているうちに、実測....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
のか。そうだとすれば、自分は当然|殉死《じゅんし》すべき運命のもので、今の生存は惰力に過ぎないのか。それとも、まだまだ生きとし生けるものの一生には、生かされてあ....
霊訓」より 著者:浅野和三郎
であり、模様であり、両者を切り離すことは、到底不可能である。就中畏るべきは習癖の惰力である。習癖は深く魂の中に喰い入りて、しばしば個性の主要部となるに至るもので....
明治劇談 ランプの下にて」より 著者:岡本綺堂
。わたしが新聞社に籍を置いて、自由に各劇場を見物し得られる頃には、かれはむかしの惰力で相当の地位を保っているに過ぎないという形で、その出勤と否とが観客にさのみの....
源之助の一生」より 著者:岡本綺堂
発揮していなかった。 源之助が活動したのは明治時代の舞台で、大正以後の彼は殆ど惰力で生存していたかの感があった。したがって、今日彼を讚美している人々の大部分は....
二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
の大問題が頭の中で渦を巻いていた。身に迫る生活上の苦労がヒシヒシと押寄せて来た。惰力で筆を執っていてもイツマデ経っても油が乗って来なかった。イクラ悶いても焦って....
」より 著者:岡本かの子
を見る。松浦も健康な陶酔から醒めて、力の抜けた微笑を彼女に振向けている。 艇の惰力で、青柳の影の濃い千住大橋の袂へ近づく。彼女は松浦とそこから岸へ上って、鮒の....
空中征服」より 著者:賀川豊彦
会にも危険になってきた。それで彼はよい加減に泣くことを控えようと努力した。しかし惰力がついているものだから、どうしてもそれを中止することが出来なかった。 涙は....
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ」より 著者:喜田貞吉
、鎌倉時代の初めにかけての時であります。この時には旧来の貴族は実力を失って、ただ惰力によってのみ旧来の状態を維持しているに止まり、実力はむしろ彼らから賤視された....