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「愛執〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

愛執の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
あらくれ」より 著者:徳田秋声
のような人であったろうと思った。母親はお島一人を除いては、どの子供にも同じような愛執を持っていた。 日が暮れる頃に、お島は物置の始末をして、漸《やっ》と夕飯に....
道草」より 著者:夏目漱石
も》たない島田の顔は、何事も覚えていないように鈍かった。昔の憎悪《ぞうお》、古い愛執《あいしゅう》、そんなものは当時の金と共に彼の心から消え失せてしまったとしか....
河明り」より 著者:岡本かの子
を需めるのではあるまい。より以上の人間性をと、つき詰めて行くのでもあろう。「青山愛執の色に塗られ、」「緑水、非怨の糸を永く曳く」などという古人の詩を見ても人間現....
仮装人物」より 著者:徳田秋声
貴いあたりから差し廻される馬車にも、時には納まる身分であった。 しかし無反省な愛執に目を蔽われた庸三にも、この怖じ気もない葉子の悪戯には、目を蔽っているわけに....
十二支考」より 著者:南方熊楠
その主の蛇神となり、今に祭の前後必ず人を溺《おぼ》らすそうだ(『郷』四巻四号)。愛執に依って蛇となったは、『沙石集』七に、ある人の娘鎌倉若宮僧坊の児《ちご》を恋....
風流仏」より 著者:幸田露伴
し、愈々影法師の仕業に定まったるか、エヽ腹立し、我|最早すっきりと思い断ちて煩悩愛執一切|棄べしと、胸には決定しながら、尚一分の未練残りて可愛ければこそ睨みつむ....
源氏物語」より 著者:紫式部
驚いております。しかたのないことです。もとの夫婦の道へお帰りになって、一方が作る愛執の念を晴らさせておあげになり、なお一日の出家の功徳は無量とされているのですか....
詩語としての日本語」より 著者:折口信夫
を染め 金紅色の日の下にわれを忘れし揺蕩は 酒精よりもなほ強く汝が立琴も歌ひえぬ愛執の苦き赤痣を醸すなり アルチュル・ランボオ 小林秀雄 この援用文は、幸福な美....
牡丹灯籠 牡丹灯記」より 著者:田中貢太郎
題になって、場所を京都にしてある。五条|京極に荻原新之丞と云う、近き比妻に後れて愛執の涙|袖に余っている男があって、それが七月十五日の精霊祭をやっている晩、門口....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
流の弔合戦に及んだというはなしは遂に残っていない。 生ける間は、人間から憎悪や愛執は除けない。 時は経ても、感情の波長はつぎつぎにうねってゆく。武蔵が生きて....
鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
べてのことのように思って――。 そして、前へゆく弦之丞の後ろ姿に、磁力のような愛執を感じながら、足も心もその人へ引きずられて行く見返りお綱。 「私は……私は…....
鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
いたたまれないような気持に迫られていた。 と――不意に、お綱は自身から、悲嘆や愛執や、すべての情感を切り破って出るように、 「もし! ……」 と叫んで、その....
私本太平記」より 著者:吉川英治
た。 ――介のつぶさな報告を聞くにつけ、正成を味方にと望む、彼の正成にたいする愛執と惜しみはむしろ、いよいよ募るばかりであるらしい。 ひとり中央といわず、こ....
茶漬三略」より 著者:吉川英治
た。 大日岳へかかった。 屍体の肌は、もう葡萄色になっていた。わしは、わしの愛執のために、老母のそうした醜い顔をいつまでもこの世に曝しておくのを罪深く思った....
大岡越前」より 著者:吉川英治
郎の容体を診る。亀次郎は、いつもの獄医とちがうせいか、それとも、実はやはり生命の愛執がさせるのか、急に、子どものように素直になって、脈を診させ、胸も背も、足のう....