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「愛憎〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

愛憎の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
偸盗」より 著者:芥川竜之介
かった。月はなおさら目にはいらなかった。ただ見たのは、限りない夜である。夜に似た愛憎の深みである。太郎は、狂気のごとく、弟の名を口外に投げると、身をのけざまに翻....
戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
で筆を駆った。 この時彼の王者のような眼に映っていたものは、利害でもなければ、愛憎でもない。まして毀誉《きよ》に煩わされる心などは、とうに眼底を払って消えてし....
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
ど至る所に、仲間の若者たちの間には感じられない、安息と平和とを見出した。そこには愛憎《あいぞう》の差別はなかった、すべて平等に日の光と微風との幸福に浴していた。....
侏儒の言葉」より 著者:芥川竜之介
に旧時代を捨てなければなりません。善悪は好悪を超越しない、好悪は即ち善悪である、愛憎は即ち善悪である、――これは『半肯定論法』に限らず、苟《いやし》くも批評学に....
或る女」より 著者:有島武郎
は、星のない夜のような、波のない海のような、暗い深い際涯《はてし》のない悲哀が、愛憎のすべてをただ一色に染めなして、どんよりと広がっていた。生を呪《のろ》うより....
或る女」より 著者:有島武郎
《ほうらつ》な醜行を訴えたに違いない。葉子の愛子と貞世とに対する偏頗《へんぱ》な愛憎と、愛子の上に加えられる御殿女中|風《ふう》な圧迫とを嘆いたに違いない。しか....
星座」より 著者:有島武郎
できあい》を示すのに引きかえて、兄に対してはことごとに気持を悪るくしているらしい愛憎の烈しい母が、二人の中に挾まって、二人の間をかえってかき乱していた。いらいら....
惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
得るだろう。 愛する以上は、憎まねばならぬ一面のあるのを忘れることが出来ない、愛憎のかなたにある愛、そういうものがあるだろうか。憎愛の二極を撥無して、陰陽を統....
金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
在でもこの世に生きているとも云える。現実に住み飽きてしまったり、現実の粗暴野卑に愛憎をつかしたり、あまりに精神の肌質のこまかいため、現実から追い捲くられたりした....
食魔」より 著者:岡本かの子
垣の主人は家を飛出し、外国までも浮浪い歩るいて音信不通であったこの甥に対し、何の愛憎も消え失せているといった。しかし、このまま捨置くことなら檜垣の家は後嗣絶える....
巴里祭」より 著者:岡本かの子
光る裁縫|鋏の冷たい腹を頬に当てゝ、昔|訣れた幾人もの夫の面影を胸の中に取出し、愛憎|交々の追憶を調べ直しているのではあるまいか。夫人の最後の夫ジョルジュには夫....
江口渙氏の事」より 著者:芥川竜之介
江口は決して所謂快男児ではない。もっと複雑な、もっと陰影に富んだ性格の所有者だ。愛憎の動き方なぞも、一本気な所はあるが、その上にまだ殆病的な執拗さが潜んでいる。....
地虫」より 著者:小栗虫太郎
いていた、あの熾烈な憎悪も、近頃ではどうやら惹き合うものが現われてきて、早苗は、愛憎並存の異様な心理に悩むようになってきた。 しかし、お悦の言葉には、強く頭を....
二葉亭余談」より 著者:内田魯庵
うな厭な犬であったから、家族は誰も嫌がって碌々関いつけなかった。が、犬ぶりに由て愛憎を二つにしない二葉亭は不便がって面倒を見てやったから、犬の方でも懐いて、二葉....
新童話論」より 著者:小川未明
海洋に対する空想、憧憬は、決して同じいものではなかったばかりでなく、これに対する愛憎、喜悲の感情に至るまで、また同じいとはいえなかったでありましょう。 それで....