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慰む
「慰む〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
慰むの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
って来る事を忘れなかった。沢も芽ぐんだ蘆《あし》と共に、彼の寂寥《せきりょう》を
慰むべく、仄《ほの》かに暖い春の雲を物静な水に映していた。藪木《やぶき》の交《ま....
「或る女」より 著者:有島武郎
だろう。老人でもあるならば、過ぎ去った昔を他人にくどくどと話して聞かせて、せめて
慰むという事もあろう。「老人には過去を、若い人には未来を」という交際術の初歩すら....
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
》む夜風にわれとわが身を抱《いだ》きて、 「まあ、おきのどくだったねえ」 渠は
慰むる語《ことば》なきがごとき面色《おももち》なりき。馭者は冷笑《あざわら》いて....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
に身躾らしく、装った衣も、鈴虫の宿らしい。 いつも引籠勝で、色も香も夫ばかりが
慰むのであったが、今日は寺町の若竹座で、某孤児院に寄附の演劇があって、それに附属....
「小春の狐」より 著者:泉鏡花
見える。 白砂の小山の畦道に、菜畑の菜よりも暖かそうな、おのが影法師を、われと
慰むように、太い杖に片手づきしては、腰を休め休め近づいたのを、見ると、大黒頭巾に....
「政談十二社」より 著者:泉鏡花
のある人ではなし、私とお米との仲を知ってるわけもないのでございますから、驚かして
慰むにも当りません、お米は何にも知らないにしましても、いっただけのことはその日あ....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
で、裂くことは出来ないが、美人の身体を半分ずつよ、丶丶丶の令息と、丶丶の親類とで
慰むのだ。土民の一少婦、美なりといえどもあえて物の数とするには足らぬ。 「ね、」....
「蜜柑」より 著者:芥川竜之介
ある。 しかしその電燈の光に照らされた夕刊の紙面を見渡しても、やはり私の憂鬱を
慰むべく、世間は余りに平凡な出来事ばかりで持ち切っていた。講和問題、新婦新郎、涜....
「誓之巻」より 著者:泉鏡花
に熱が高くなりますからまるで、現。」 と低声にいう。かかるものをいかなる言もて
慰むべき。果は怨めしくもなるに、心激して、 「どうするんです、ミリヤアド、もうそ....
「岩波文庫論」より 著者:岩波茂雄
おいては岩波文庫が、その先蹤たるレクラム文庫を恥ずかしむるものでないと、ひそかに
慰むるところがあった。 ○ 今日世界の現状は政治、経済、思想各方面....
「活人形」より 著者:泉鏡花
夜中に助け出して、財産も他手には渡さないから、必ず御案じなさるな。と言語を尽して
慰むれば、頷くように眼を閉じぬ。 折から外より戸を叩きて、「もう開けましても差....
「欧米各国 政教日記」より 著者:井上円了
文学家の推歩術によるといえども、学術上一点も考うべきところなし。ただ、愚民の意を
慰むるに過ぎず。しかるに愚民は固くこれを信じ、毎日その暦書を見て日業をとるという....
「西航日録」より 著者:井上円了
れば、自然の勢い、白人種に圧倒せらるる傾向あり。ゆえに余、さらに一句をよみて自ら
慰む。 白金の中に独りの黄金哉 十五日、午後イタリアの山脈を望み、夜に入りてメ....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
面油のごとく、また鏡に似たり。ときどき小巒の海上に突起せるを見るは、大いに旅情を
慰むるに足る。上等船客西洋紳士十六人中、鬚髭の有無を検するに、有せざるもの十二人....
「大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
如くにて、熱涙は自ら禁ぜず。 船頭は、悄然として再び、『お気の毒でしたね。』と
慰む。伏したる漁史の口よりは、微かに、『どうも、お前にも気の毒で。』 船『なアに....