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慴
「慴〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
慴の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
句を微吟《びぎん》したりした。
所が横町《よこちょう》を一つ曲ると、突然お蓮は
慴《おび》えたように、牧野の外套《がいとう》の袖を引いた。
「びっくりさせるぜ。....
「雪後」より 著者:梶井基次郎
が殺された。泥棒の噂や火事が起こった。短い日に戸をたてる信子は舞いこむ木の葉にも
慴《おび》えるのだった。 ある朝トタン屋根に足跡が印《しる》されてあった。 ....
「乱世」より 著者:菊池寛
が眩んでしまった。赤報隊は、そこでも一万両に近い軍用金を集めた。今尾高須の二藩を
慴服させた赤報隊は、意気揚々として、桑名藩へ殺到しようとして、桑名城の南、安永村....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
として公判廷に出ずる度に猛烈な兇暴態度を示しながら、且つ其雄弁と剛腹とは全法廷を
慴伏していた」 と嗟嘆せしめた程である。 或人は疑った、彼は既に狂せるのでは....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
けさせたのは、実にその飛び道具の襲撃を避けるためでした。まことや金城鉄壁、天下も
慴伏す葵の御定紋が、その切れ端たりとも駕籠の先にかかったならば、もう只の駕籠では....
「霜凍る宵」より 著者:近松秋江
ひとりで立っている。 そして出し抜けに私がはいって来たのを見て、 「ああ!」と
慴えたように中声を発して、そのままそこに立ち竦んだ。 私は、いい気味だというよ....
「不沈軍艦の見本」より 著者:海野十三
一応の説明がすんだ。 大統領はもちろん、幕僚も建艦委員も共に金博士の智力の下に
慴伏した感があった。 「うむ、大したものだ。これを真似て、早速百隻の不沈軍艦をつ....
「共軛回転弾」より 著者:海野十三
ごくりと飲んでいった。 「今のはベラントの失言でございます。博士、世界をたちまち
慴伏させる新兵器といたしましては、どんなものを御在庫になっていましょうか」 「分....
「或る女の手記」より 著者:豊島与志雄
ってくるに従って、若い私の心は軽い矜りをさえ感ずることがあった。頭の奥には一種の
慴えが残っていながら、二度まで見た同じような幻を、いつとはなしに忘れがちであった....
「或る男の手記」より 著者:豊島与志雄
計を眺めた。十一時近くまで彼女は帰って来なかった。 表に俥が止った時、私は物に
慴えたように立竦んだ。それから机の前に坐って、書物を一冊披いて読み耽ってる風を装....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
こういいながら平八は、またも手帳へ書きつけた。 「つまり彼は威嚇をもって、相手を
慴伏させたのだ」将監は先へ語りつづけた。「こいつと目差した船があると、まずその進....
「回想録」より 著者:高村光太郎
父は一方の親分になった。祖父は体躯は小さかったが、声が莫迦に大きく、怒鳴ると皆が
慴伏した。中島兼吉と言い、後に兼松と改めたが、「小兼さん」と呼ばれていて、小兼さ....
「ミケランジェロの彫刻写真に題す」より 著者:高村光太郎
後数世紀に亘って、人類の人生観世界観の革新せられない限り、人はただ彼の彫刻の前に
慴伏する外はなかった。そしてただ徒にその表面様式を硬化させている外はなかった。彼....
「頸の上のアンナ」より 著者:神西清
て来るのをどうしようもなかった。彼のぶくぶくした身体の物柔かな動作までが、彼女を
慴えさせるのであった。怖ろしくもあり、厭らしくも思えた。彼はたち上って、頸から勲....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
されたる下界が存在し、そこに風雨氷雪の危険と威嚇とに打ち克って、私達の心を威圧し
慴伏せんとする山岳の絶対権威に抗して、人間最高の精神的努力が微かながらも勝利を叫....