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懊
「懊〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
懊の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「水害雑録」より 著者:伊藤左千夫
意を払うことを、秒時もゆるがせにしてはいない。 不安――恐怖――その堪えがたい
懊悩の苦しみを、この際幾分か紛らかそうには、体躯を運動する外はない。自分は横川天....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
議はありますまい。唐突に嫁入らせると、そのぞっこんであった男が、いや、失望だわ、
懊悩だわ、煩悶だわ、辷った、転んだ、ととかく世の中が面倒臭くって不可んのです。」....
「星あかり」より 著者:泉鏡花
が唯辷ってあるいて、少しも轣轆の音の聞えなかったことも念頭に置かないで、早くこの
懊悩を洗い流そうと、一直線に、夜明に間もないと考えたから、人憚らず足早に進んだ。....
「去年」より 著者:伊藤左千夫
そむきたくないが、友人はしだいに自分を離れる。罪がことごとく自分にあるのだから、
懊悩のやるせがないのだ。 あぶない道を行く者は、じゅうぶんに足をふんばり背たけ....
「階段」より 著者:海野十三
の場に崩れるようにへたばった。 其の夜、下宿にかえった僕が、悔恨と魅惑との間に
懊悩の一夜をあかしたことは言うまでもない。翌日はたとえ先生との約束でも今日は行く....
「国際殺人団の崩壊」より 著者:海野十三
べて生きている人間のものではなかったのである。彼女は、椋島に捨てられたものと思い
懊惱の果、家出をしたのであったが、電気協会ビル事件のとき、思いがけなく椋島のため....
「三角形の恐怖」より 著者:海野十三
の身で余り激しく駈け出した為、心臓|麻痺を起したものらしい」とあったのです。私は
懊悩のたえ切れない苦しさを少しでも軽くしようと冀って、昼間出掛けようと思った先輩....
「白蛇の死」より 著者:海野十三
人となった。 其の翌日の夕方、山名国太郎は今市から護送されて来た。青年は数日の
懊悩にめっきり憔悴して、極度の神経衰弱症に陥っているらしく、簡単な訊問に対しても....
「奇賊悲願」より 著者:海野十三
ないことは、それを試みるまでもなく分っている。 こういう次第だから、烏啼天駆の
懊悩するのも尤もであった。そして彼は次第に食慾を減じ、女人をして惚々させないでは....
「妖僧記」より 著者:泉鏡花
母を失い、全く孤独の身とはなり果てつ、知れる人の嫁入れ、婿|娶れと要らざる世話を
懊悩く思いて、母の一周忌の終るとともに金沢の家を引払い、去年よりここに移りたるな....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
く器量。垢抜して色の浅黒いのが、絞の浴衣の、糊の落ちた、しっとりと露に湿ったのを
懊悩げに纏って、衣紋も緩げ、左の手を二の腕の見ゆるまで蓮葉に捲ったのを膝に置いて....
「ある自殺者の手記」より 著者:秋田滋
日を送っているこうした人々を駆って、われと我が命を断たしめるのは、いかなる深刻な
懊悩、いかなる精神的苦痛、傍目には知れぬ失意、劇しい苦悶がその動機となっての結果....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
満ちて川風に音ある時となりて清涼の気味滴る計りなり。人に怪しめられ巡査に咎められ
懊悩としたる気分も洗い去りて清くなりぬ。ただ看れば橋の中央の欄干に倚りて川面を覗....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
文学嫌いは前にいったように単純な志士気質や政治家肌からではなかったが、それほどに
懊悩してジリジリと興奮するまで文学を嫌い抜いていたのは、一つは「このいやという存....
「大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
尾の魚を惜むに非ず。釣道の極意を得ざりしを惜むなり。と、兎さま角さまに、苦悶し、
懊悩し、少時は石像木仏の如し。船頭、余り気を落せるを見て、 『旦那|如何です。此....