懐中鏡[語句情報] » 懐中鏡

「懐中鏡〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

懐中鏡の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
い顔を思う存分に冷やした。そして少し人心地《ひとごこち》がついたので、帯の間から懐中鏡を取り出して顔を直そうとすると、鏡がいつのまにかま二つに破《わ》れていた。....
或る女」より 著者:有島武郎
にぎらぎらと大きく見せた。鏡を見まいと思いながら、葉子はおりあるごとに帯の間から懐中鏡を出して自分の顔を見つめないではいられなかった。 葉子は貞世の寝息をうか....
パンドラの匣」より 著者:太宰治
やだから、はじめからお土産の強迫などもしなかったし、また、みんなと同じおもちゃの懐中鏡一枚の恩恵に浴したところで、つまらない事だと思っていたし、マア坊が僕たちの....
」より 著者:徳田秋声
なかったの。」 お増は階下で着更えをすると、埃っぽい顔を洗ったり、袋から出した懐中鏡で、気持のわるい頭髪に櫛を入れたりしていた。 「え、別に……姉さんがいない....
世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
は言った。 「旦那。こんなに素敵な物があるんです」 彼は箱の抽斗から小さな円い懐中鏡をとり出して、わたしの鼻のさきへ突きつけたので、なんの気もなしに見かえると....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
るのもあれば、あるいはチェロをひいてるのもある、小さな像が置いてあって、そのほか懐中鏡、化粧道具、文房具、なども整然と並べてあった。棚の上には、しかめ顔をしたベ....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
が幾時間も、おめかしをするというよりもむしろなまけて、顔を映すのを常としていた、懐中鏡であった。クリストフはその鏡を取った、それを差出している手を取った。 「お....
集団見合」より 著者:坂口安吾
しょに出てきた二人の娘が、向い合って河原に尻もちついて、さっきから、もう二時間も懐中鏡で鼻の頭をてらしながら、同じところへパフばかりたゝいている。男の顔を見るは....
桜の園」より 著者:神西清
あるんだね? 身もちさえよくすりゃ、泣くことにもならんのさ。 ドゥニャーシャ (懐中鏡を見ながら白粉をはたく)パリからお便りをくださいね。あたしあんたが、あんな....
橋の上」より 著者:犬田卯
さぶちゃんの――その年頃の恋人(?)だった。 ある日、さぶちゃんは母親の小さい懐中鏡を持って来て、綾子や、その他の大きい女生徒が何気なく塀などによりかかってい....
妾宅」より 著者:永井荷風
た長襦袢《ながじゅばん》の膝の上か、あるいはまた船底枕《ふなぞこまくら》の横腹に懐中鏡を立掛けて、かかる場合に用意する黄楊《つげ》の小櫛《おぐし》を取って先ず二....
元八まん」より 著者:永井荷風
荷前の電車停留場へ来ると、その女は電柱の下のベンチに腰をかけ、電燈の光をたよりに懐中鏡《ふところかがみ》を出して化粧を直している。コートは着ていないので、一目に....
審判」より 著者:カフカフランツ
なかったならば、娘はおそらく倒れたであろう。Kはしばらくじっと立ち止っていたが、懐中鏡で髪を直し、次の踊り場にころがっている帽子を拾い上げ、――案内係がきっとそ....
活人形」より 著者:泉鏡花
して座敷に帰り、手早く旅行鞄を開きて、小瓶の中より絵具を取出し、好く顔に彩りて、懐中鏡に映し見れば、我ながらその巧妙なるに感ずるばかり旨々と一皮|被りたり。 ....
西航日録」より 著者:井上円了
物館をたずねて、先生の遺物を拝観す。その中には、先生在世中所携の帽子、杖、手袋、懐中鏡等あり。いずれも質素のものにて、田舎の老爺の携帯せるもののごとく見ゆ。大学....