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「懐旧〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

懐旧の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
けて、帯前を整えながら出て来た柔和な細君《さいくん》と顔を合わせた時は、さすがに懐旧の情が二人の胸を騒がせた。細君は思わず知らず「まあどうぞ」といったが、その瞬....
あの時分」より 著者:国木田独歩
す。何度となく繰り返されます。繰り返しても繰り返しても飽くを知らぬのは、またこの懐旧談で、浮き世の波にもまれて、眉目のどこかにか苦闘のあとを残すかたがたも、「あ....
親子」より 著者:有島武郎
出すのには閉口した」 そんなことをおおげさに言いだして父は高笑いをした。監督も懐旧の情を催すらしく、人のいい微笑を口のはたに浮かべて、 「ほんとにそうでした」....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
このごろ秋晴れの朝、巷に立って見渡すと、この町も昔とはずいぶん変ったものである。懐旧の感がむらむらと湧く。 江戸時代に元園町という町はなかった。このあたりは徳....
四日間」より 著者:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ
えば辛い。憶うまい憶うまい。むかしの幸福。今の苦痛……苦痛は兎角免れ得ぬにしろ、懐旧の念には責められたくない。昔を憶出せば自然と今の我身に引比べられて遣瀬無いの....
温泉」より 著者:梶井基次郎
し、溪の眺めも眺められたし、というのが古くからこの温泉を知っている浴客のいつもの懐旧談であったが、多少牢門じみた感じながら、その溪へ出口のアーチのなかへは溪の楓....
妖僧記」より 著者:泉鏡花
りけり。 読書、弾琴、月雪花、それらのものは一つとして憂愁を癒すに足らず、転た懐旧の媒となりぬ。ただ野田山の墳墓を掃いて、母上と呼びながら土に縋りて泣き伏すを....
女難」より 著者:国木田独歩
じました。 私は今でも母が恋しくって恋しくって堪らんのでございます」 盲人は懐旧の念に堪えずや、急に言葉を止めて頭を垂れていたが、しばらくして(聴者の誰人な....
恒藤恭氏」より 著者:芥川竜之介
両度のみ。昔一高の校庭なる菩提樹下を逍遥しつつ、談笑して倦まざりし朝暮を思えば、懐旧の情に堪えざるもの多し。即ち改造社の嘱に応じ、立ちどころにこの文を作る。時に大正壬戌の年、黄花未だ発せざる重陽なり。....
ある恋の話」より 著者:菊池寛
た。尤も御維新のドサクサが直ぐ起ったのですからね」と祖母は昔を想い出したような、懐旧的な情懐に沈んで行ったようでありました。私は、祖母の恋物語を聞いて、ある感銘....
十番雑記」より 著者:岡本綺堂
であろう。自分も今まで全く忘れていたのを、十四年後の今日偶然に発見して、いわゆる懐旧の情に堪えなかった。それと同時に、今更のように思い浮んだのは震災十四週年の当....
思い出草」より 著者:岡本綺堂
ない。このごろ秋晴の朝、巷に立って見渡すと、この町も昔とは随分変ったものである。懐旧の感がむらむらと湧く。 江戸時代に元園町という町はなかった。このあたりは徳....
西航日録」より 著者:井上円了
し、市街および家屋は多少古色を存し、ことに日本に数百年来交通せし国なれば、自然に懐旧の情を動かすを覚ゆ。しかれどもこれをほかの国に比するに、市中見るものなんとな....
ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
ぜヘラクレスの事を少しも言わないのです。 ヒロン そんな名を言って、己に懐旧の情を起させては 困るなあ。フォイボスや、またアレス、ヘルメス なんどと云う....
早稲田神楽坂」より 著者:加能作次郎
たなくなった。今では神楽坂演芸場の方が唯一の落語の定席となったらしい。 そんな懐旧談をしていたら限りがないが、兎に角寺町の通りの最近の発展は非常なものである。....