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「懐炉〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

懐炉の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
》らなくなったから好いや。」 「ちっとは楽になったと見えるねえ。」 叔母は母の懐炉《かいろ》に入れる懐炉灰を焼きつけていた。 「四時までは苦しかったようですが....
点鬼簿」より 著者:芥川竜之介
しゃ》の上を照らしていたことを覚えている。 四 僕は今年の三月の半ばにまだ懐炉を入れたまま、久しぶりに妻と墓参りをした。久しぶりに、――しかし小さい墓は勿....
残されたる江戸」より 著者:柴田流星
銭二銭の安絵葉書商うだけでは、腹も懐も温くはならず、さればその懐に忍ばせたもの、懐炉温石のたぐいにあらずして十二枚一組の極彩色、中なるは手易くあけて見せずに、客....
春の上河内へ」より 著者:板倉勝宣
に照らされて、雪の坂の上の林が影をうすく投げていた。自分は白い息を吹いて見ながら懐炉に火をつけて、真綿と一緒に膝に巻いた。再び寝ようとすると、閉じたまぶたに月の....
大空魔艦」より 著者:海野十三
ころが、たいへん熱い。 なにがこう熱いのであろうか。 空魔艦は、少年のために懐炉を入れておいたのであろうか。まさか、そのような親切が空魔艦の乗組員にあるはず....
めでたき風景」より 著者:小出楢重
変化をおよぼすのと、心身の疲労が重なり例年鑑査の中程から必ず下痢を催すのである。懐炉を腹にあてて残暑の炎天を上野へ急ぐ辛さは深い。 その弱り目において、自分の....
白金之絵図」より 著者:泉鏡花
五郎は、肩をせめて胸をわななかして、はらはらと落涙した。 「お爺様、さ、そして、懐炉をお入れなさいまし、懐中に私が暖めて参りました。母も胸へ着けましたよ。」 「....
露肆」より 著者:泉鏡花
、繻子の帯がきりりと動いた。そのまま、茄子の挫げたような、褪せたが、紫色の小さな懐炉を取って、黙って衝と技師の胸に差出したのである。 寒くば貸そう、というので....
西鶴と科学」より 著者:寺田寅彦
餅糖の製法、蘇枋染で本紅染を模する法、弱った鯛を活かす法などがあり、『織留』には懐炉灰の製法、鯛の焼物の速成法、雷除けの方法など、『胸算用』には日蝕で暦を験すこ....
工学博士末広恭二君」より 著者:寺田寅彦
フィラメントの爆発を使ったり、また電扇の研究と聯関して気流の模様を写真するために懐炉灰の火の子を飛ばせるといったようなことも試みた。無闇に読みもしない書物を並べ....
深川女房」より 著者:小栗風葉
力で直らないものかねえ! あまり痛むなら、菎蒻でも茹でて上げようか?」 「なに、懐炉を当ててるから……今日はそれに、一度も通じがねえから、さっき下剤を飲んで見た....
葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
別に案ずるまでもない、同町の軒並び二町ばかり洲崎の方へ寄った角に、浅草紙、束藁、懐炉灰、蚊遣香などの荒物、烟草も封印なしの一銭五厘二銭玉、ぱいれっと、ひーろーぐ....
青春の息の痕」より 著者:倉田百三
た。 その時お絹さんが、私にかぜを引かすまいためにとて、無理に持たせてよこした懐炉に、灰に火をつけて彼女が、ハンカチに包んで、私の懐に入れてくれました。私は帰....
周防石城山神籠石探検記」より 著者:喜田貞吉
に尻を落ちつけたのはかれこれ十時であった。 当日同行者の一人柳川文吉氏詩あり。懐炉扶病壮心摧 踏破霜威幾崔嵬 千里検来千古跡 山神応是春風開 右従行喜田博士....
五重塔」より 著者:幸田露伴
葉にいよいよ身を堅くして縮こまり、お構い下さいましては恐れ入りまする、ハイハイ、懐炉を入れておりますればこれで恰好でござりまする、と意久地なく落ちかかる水涕を洲....