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「懸物〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

懸物の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
一夕話」より 著者:芥川竜之介
いう暮しだろうという気がするんだ。まず床《とこ》の間《ま》にはいつ行っても、古い懸物《かけもの》が懸っている。花も始終絶やした事はない。書物も和書の本箱のほかに....
坊っちゃん」より 著者:夏目漱石
かどうだか知らないが、とにかく向うじゃ、君に困ってるんだ。下宿料の十円や十五円は懸物《かけもの》を一|幅《ぷく》売りゃ、すぐ浮《う》いてくるって云ってたぜ」 「....
永日小品」より 著者:夏目漱石
は金の調達《ちょうだつ》を引き受けた。その時|彼《か》れは風呂敷包の中から一幅の懸物《かけもの》を取り出して、これがせんだって御話をした崋山《かざん》の軸《じく....
硝子戸の中」より 著者:夏目漱石
、私の二番目の兄がごろごろしていた。この兄は大の放蕩《ほうとう》もので、よく宅の懸物《かけもの》や刀剣類を盗み出しては、それを二束三文に売り飛ばすという悪い癖《....
彼岸過迄」より 著者:夏目漱石
とを見比べるだけで、何事も云わずにいた。袋は能装束《のうしょうぞく》の切れ端か、懸物《かけもの》の表具の余りで拵《こし》らえたらしく、金の糸が所々に光っているけ....
こころ」より 著者:夏目漱石
たった市《し》、――その市には叔父が住んでいたのです、――その市から時々道具屋が懸物《かけもの》だの、香炉《こうろ》だのを持って、わざわざ父に見せに来ました。父....
行人」より 著者:夏目漱石
くれたんだ」と云って調戯《からかい》半分岡田を怒らした事を覚えていた。 二人は懸物《かけもの》を見て、当時を思い出しながら子供らしく笑った。岡田はいつまでも窓....
思い出す事など」より 著者:夏目漱石
で、またある時は虫干《むしぼし》の折に、余は交《かわ》る交るそれを見た。そうして懸物《かけもの》の前に独《ひと》り蹲踞《うずく》まって、黙然と時を過すのを楽《た....
子規の画」より 著者:夏目漱石
ておいては転宅の際などにどこへ散逸するかも知れないから、今のうちに表具屋へやって懸物《かけもの》にでも仕立てさせようと云う気が起った。渋紙の袋を引き出して塵《ち....
夢十夜」より 著者:夏目漱石
鼻から熱い息が荒く出る。こめかみが釣って痛い。眼は普通の倍も大きく開けてやった。懸物《かけもの》が見える。行灯が見える。畳《たたみ》が見える。和尚の薬缶頭《やか....
艸木虫魚」より 著者:薄田泣菫
居間を出て黒書院を通りかかった。ふと気がつくと、違棚の上に箱から取出したばかりの懸物が一つ置いてあった。頼宣はもしやと思って検めてみた。それは紛う方もない、虚堂....
政談十二社」より 著者:泉鏡花
別に慕ってくれますので、どうやら他人とは思えません。」 婆さんはこの時、滝登の懸物、柱かけの生花、月並の発句を書きつけた額などを静に※したから、判事も釣込まれ....
新年雑俎」より 著者:寺田寅彦
って見廻しただけで既に胴ぶるいの出そうな冷たさをもった部屋である。置時計、銅像、懸物、活花、ことごとくが寒々として見えるから妙である。 瓦斯ストーヴでもあると....
鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
でいられます。それを後に福羽美静翁が半折に書いて、自ら讃歌を添えて贈られたのが、懸物になって残っていました。俳諧は大阪にいた頃|点取ということを人から勧められた....
申訳」より 著者:永井荷風
、覚えず其顔を見詰めると、お民の方でもじろりと僕の顔を尻目《しりめ》にかけて壁の懸物へと視線をそらせたが、その瞬間僕の目に映じたお民の容貌の冷静なことと、平生か....