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「我にもなく〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

我にもなくの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
星座」より 著者:有島武郎
」と自分にからみついてくるガンベの鉄のような力強い腕を払い退けながら、柿江の足は我にもなくガンベの歩く方に跟《つ》いていった。二人はいつの間にか制帽を懐《ふとこ....
浮雲」より 著者:二葉亭四迷
に納《い》れてあッた年頃五十の上をゆく白髪たる老婦の写真にフト眼を注《と》めて、我にもなく熟々《つらつら》と眺《なが》め入ッた。これは老母の写真で。御存知の通り....
古き小画」より 著者:宮本百合子
彼ははっきりその必要を知っているのだが、対手が余り平然としていると、憤怒が湧き、我にもなく四肢をいきませてしまうのだ。 スーラーブは、この勝負が、まるで、腕の....
杉垣」より 著者:宮本百合子
子の顔がさあっと上気した。 「ああそんなこと」 慎一の片っ方の手をつかまえて、我にもなく自分の胸へしっかりおしつけながら、 「とうに分っていることじゃないの、....
朝の風」より 著者:宮本百合子
に動かされたひとが現れて、どちらへいらっしゃるのですかと訊かれでもしたら、サヨは我にもなく顔を赧らめて少しまごついたかもしれない。ゆくところがサヨ自身にわかって....
道標」より 著者:宮本百合子
って行った。 対手が行ってしまうと同時に、伸子は急にきまりわるさがこみあげた。我にもなくつい気取って、メルシなんて云ってしまって。フランス語なんか知りもしない....
渋谷家の始祖」より 著者:宮本百合子
そうな心持さえする。 どうだろう、ほんとに、兄、兄貴なのだろうか。 正隆は、我にもなく溜息を吐くのである。 けれども、正隆の目前に、まざまざと浮んで来る長....
アンドロギュノスの裔」より 著者:渡辺温
して、御心配なさるには及びません。』 『いや、僕は、そ、それでも――』 Y君は我にもなく面喰ってしまったのである。 『さ、どうぞ、はっきり仰有って下さいまし。....
雨の昼」より 著者:宮本百合子
とする。しかし、その力も失せて、イレーネは絶望の果て、そのあたりの池へザブザブと我にもなく歩みこんで自殺しようとする。妹のババと羊飼の少年フィリップとが危くかけ....
クリスマス・カロル」より 著者:ディケンズチャールズ
で、私は云うのです、神よ、聖降誕祭を祝福し給え! と。」 大桶の中にいた書記は我にもなく拍手喝采した。が、すぐにその不穏当なことに気が附いて、火を突っついて、....
ほととぎす」より 著者:堀辰雄
と言うのは羞《はず》かしいような気がする程。――それほど、この頃はどう云うものか我にもなくぐっすりと寐《ね》てばかりいる自分をかえり見て、私は皆の前では何も言わ....
立枯れ」より 著者:豊島与志雄
味で、実は島村君には、眼の活発な断髪の美人がついてるようだがと、キミ子のことを、我にもなく持ちだしてみると、静葉は一寸首をかしげてから、それは、たしかキミ子さん....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
それらの聞き馴《な》れた物音の一つが、予想どおりの段取で聞こえないおりには、彼は我にもなくその変化の理由を考えた。食卓では、機械的に会話に耳をかし始めた。ブラウ....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
いことである。 彼女はやさしい文句で彼に返事を書いた。人生に傷つけられて以来、我にもなく一種の疑惑をいだくようになった、ということを彼女は詫《わ》びた。自分は....
秋空晴れて」より 著者:吉田甲子太郎
轟音、タタタタタとリベット(鋲)を打ち込む響、それに負けないように、石山|平吉は我にもなく怒鳴るような大声で一息に言い終ると、心配そうな眼をして監督の顔を覗き込....