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「我知らず〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

我知らずの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
疑惑」より 著者:芥川竜之介
刺戟したのは、彼の左の手の指が一本欠けている事だった。私はふとそれに気がつくと、我知らず眼をその手から外《そ》らさないではいられなかった。 「何か御用ですか。」....
開化の良人」より 著者:芥川竜之介
じょう》から帰った時、万一三浦はもう物故《ぶっこ》していたのではないかと思って、我知らず不安の眼を相手の顔に注《そそ》がずにはいられなかった。すると子爵は早くも....
黒衣聖母」より 著者:芥川竜之介
ろと云う手真似をして見せた。 「ほんとうですか。」 私は椅子へかけると同時に、我知らず怪しい声を出した。田代君は私より一二年|前《ぜん》に大学を卒業した、秀才....
日光小品」より 著者:芥川竜之介
とを絶えずこうむったあのクロポトキンが温かき心をもってせよと教える心もちを思うと我知らず胸が迫ってきた。そうだ温かき心をもってするのは私たちの務めだ。 私たち....
お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
るし、お前にゃ愚痴《ぐち》ばかりこぼされるし、――」 洋一は父の言葉を聞くと、我知らず襖《ふすま》一つ向うの、病室の動静に耳を澄ませた。そこではお律《りつ》が....
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
動いていた。彼は敵味方の反目に不快な感じを抱きながら、しかもその反目のただ中へ、我知らず次第に引き込まれて行った。―― 現に一度はこう云うことがあった。 あ....
秋山図」より 著者:芥川竜之介
ように、気を使う必要があったのです。が、いくら努めてみても、どこか不服な表情が、我知らず外へ出たのでしょう。王氏はしばらくたってから、心配そうに私へ声をかけまし....
藪の中」より 著者:芥川竜之介
ったではありませんか? わたしは男に蹴られたよりも、その眼の色に打たれたように、我知らず何か叫んだぎり、とうとう気を失ってしまいました。 その内にやっと気がつ....
妖婆」より 著者:芥川竜之介
の。」と、今度は両手を耳へ当てながら、さも一大事らしく囁いたと云うのです。新蔵は我知らず堅くなって、じっと耳を澄ませましたが、襖一重向うに隠れている、お敏のけは....
婦系図」より 著者:泉鏡花
り山手になって容子を知らんが、相変らず繁昌か。」 三十九 小芳は我知らず、(ああ、どうしよう。)と云う瞳が、主税の方へ流るるのを、無理に堪えて、....
木の子説法」より 著者:泉鏡花
い菩薩の列の、一番|框へ近いのに――導かれるように、自分の頭と足が摺って出ると、我知らず声を立てて、わッと泣きながら遁出したんです。 路地口の石壇を飛上り、雲....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
ません。廊下から、厠までは、宵から通った人もある。転倒している最中、どんな拍子で我知らず持って立って、落して来ないとも限らんから、念のため捜したものの、誰も開け....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
れていても胸が悪い、口をきかれると、虫唾が走る、ほほほ、と笑われると、ぐ、ぐ、と我知らず、お時が胸へ嘔上げて、あとで黄色い水を吐く……」 「聞いちゃおられん、そ....
悪獣篇」より 著者:泉鏡花
おされて呼吸の苦しげなるは、早や墳墓の中にこそ。呵呀、この髪が、と思うに堪えず、我知らず、ハッと起きた。 枕を前に、飜った掻巻を背の力に、堅いもののごとく腕を....
ある自殺者の手記」より 著者:秋田滋
る一部始終を読み返した。私は歔欷いている自分の哀れな心の中に痛い傷痕をかんじて、我知らず手足を折られでもした者のように呻き声を放った。 私はそこで河をひとが溯....