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戦ぐ
「戦ぐ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
戦ぐの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「婦系図」より 著者:泉鏡花
」 とじりりと膝を寄せて、その時、颯と薄桃色の瞼の霑んだ、冷たい顔が、夜の風に
戦ぐばかり、蓐の隈に俤立つのを、縁から明取りの月影に透かした酒井が、 「誰か来て....
「吉原新話」より 著者:泉鏡花
風の死んだ、寂とした夜で、あたかも宙に拡げたような、蚊帳のその裙が、そよりと
戦ぐともしないのに、この座の人の動くに連れて、屋の棟とともに、すっと浮いて上った....
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
を開いているのは、富士植物の踊子|卯木で、卯木の花は散っていた。微風がソヨソヨと
戦ぐからであろう。富士|薊の紫の花が、花冠を低く水へ垂れ、姿鏡を写していた。燃え....
「黴」より 著者:徳田秋声
の人から送って来るのもたくさんあった。先生は寝ていながら、干してあるその草の風に
戦ぐのを、心地よげに眺めていた。 「私は先生に、何か大きいものを一つ書いて頂きた....
「心の河」より 著者:宮本百合子
……」 さよは、清らかな明るい朝が、堪らず恋しくなった。黎明の微風の爽やかさ、
戦ぐ樹や草のあのよい薫り。だんだん明るくすき透り、森や家や道傍の石粒まで燦めかせ....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
、冴えた水色の隈なき中に、浅葱や、樺や、朱や、青や、色づき初めた銀杏の梢に、風の
戦ぐ、と視めたのは、皆見世ものの立幟。 太鼓に、鉦に、ひしひしと、打寄する跫音....
「九月の或る日」より 著者:宮本百合子
花園の末枯れた蓮池の畔を歩いていた頃から大分空模様が怪しくなり、蝉の鳴く、秋草の
戦ぐ夕焼空で夏の末らしい遠雷がしていた。帰りは白鬚から蒸気船で吾妻橋まで戻る積り....
「蓮花図」より 著者:宮本百合子
その絵から私は強い印象を受け、こうやって書いていても、黝んだ蓮の折れ葉の下に
戦ぐ鷺の頸の白い羽毛を感じる。――その絵の中に一本の蓼《たで》がある。蓮の中から....
「五月の空」より 著者:宮本百合子
を燦めかせて 私の心を 鼓舞して呉れ。 お前の裡には 慕しい我北国の田園も 日に
戦ぐユーカリの葉もある。 野に還し、不思議な清澄への我ノスタルジアを癒して呉れる....
「木蔭の椽」より 著者:宮本百合子
の流れ下る巖角に裾をまくった父が悠々此方を向いて跼んで居る。風で、彼方の崖の樹が
戦ぐ。その時、川瀬の音を縫い乍ら、静かに聞えた藪鶯のホーホケキョ。――午後が、ひどくひっそりと永く感じられた。....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
に浮べて、秋の夜の月の趣に、いつか心の取られた耳へ、蘆の根の泡立つ音、葉末を風の
戦ぐ声、あたかも天地の呟き囁くがごとく、我が身の上を語るのを、ただ夢のように聞き....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
癖、件の姿ばかりは、がっくり伸ばした頸の白さに、毛筋が揃って、後れ毛のはらはらと
戦ぐのまで、瞳に映って透通る。 これを見棄てては駆抜けられない。 「もし……」....
「或る日」より 著者:宮本百合子
スのような真中の濃い網めを通って彼方にゆく。 庭の隅でカサカサ、八ツ手か何かが
戦ぐ音がした。 チュッチュッ! チー チュック チー。…… 暖い日向は、白い....
「東上記」より 著者:寺田寅彦
ば求めんと思ううち汽車出でたれば果さず。瀬田の長橋渡る人稀に、蘆荻いたずらに風に
戦ぐを見る。江心白帆の一つ二つ。浅き汀に簾様のもの立て廻せるは漁りの業なるべし。....
「壁の眼の怪」より 著者:江見水蔭
こまでになると、言葉はどちらからも発しないのであった。 ただ青萱が、そよそよと
戦ぐばかりであった。 宮の背後から、ぬっと出て来たのは、筋骨|逞ましい村の若者....