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「手向け〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

手向けの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
年末の一日」より 著者:芥川竜之介
古びを加えていた。おまけにお墓のまわりの土もずっと霜に荒されていた。それは九日に手向けたらしい寒菊や南天の束の外に何か親しみの持てないものだった。K君はわざわざ....
野菊の墓」より 著者:伊藤左千夫
とを十分あなたにお詫《わ》びをし、またあれの墓にも香花《こうげ》をあなたの手から手向けて頂いたら、少しは家中の心持も休まるかと思いまして……今日のことをなんぼう....
茶の本」より 著者:岡倉覚三
視するままに許している。美術家が無事に墳墓におさめられると、われわれは称賛の花を手向けるのである。進化論の盛んであった十九世紀には、人類のことを考えて個人を忘れ....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
杯をさしたばかりで、こう酌いだ酒へ、蝋燭の灯のちらちらと映る処は、どうやら餓鬼に手向けたようだ。あのまた馬鹿野郎はどうしている――」と膝に手を支き、畳の杯を凝と....
妖僧記」より 著者:泉鏡花
して、満目|転た荒涼たり。 いつも変らぬことながら、お通は追懐の涙を灌ぎ、花を手向けて香を燻じ、いますが如く斉眉きて一時余も物語りて、帰宅の道は暗うなりぬ。 ....
陽炎座」より 著者:泉鏡花
止しましょう、おもいの種だから……」 と胸を抱いて、 「この一輪は蔭ながら、お手向けになったわね。」と、鼻紙へ密と置くと、冷い風に淡い紅……女心はかくやらむ。....
縷紅新草」より 著者:泉鏡花
ないで、着衣のお召で包むも惜しい、色の清く白いのが、片手に、お京――その母の墓へ手向ける、小菊の黄菊と白菊と、あれは侘しくて、こちこちと寂しいが、土地がら、今時....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
籠を、仏壇のない押入の上段に据えて、上へ、お仏像と先祖代々の位牌を飾って、今朝も手向けた一|銭蝋燭も、三分一が処で、倹約で消した、糸心のあと、ちょんぼりと黒いの....
照葉狂言」より 著者:泉鏡花
語る。苔深き墳墓の前に、桔梗やらむ、萩やらむ、月影薄き草の花のむら生いたるのみ。手向けたる人のあとも見えざるに、われは思わず歩を留めぬ。 あわれ広岡の、姉上は....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
ひしと幽界まで通じて来ることでございました。両親は怠らず、私の墓へ詣でて花や水を手向け、又十|日祭とか、五十|日祭とか申す日には、その都度神職を招いて鄭重なお祭....
怨霊借用」より 著者:泉鏡花
に土をあわれに装って、石地蔵が、苔蒸し、且つ砕けて十三体。それぞれに、樒、線香を手向けたのがあって、十三塚と云う……一揆の頭目でもなし、戦死をした勇士でもない。....
葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
も聞えぬ小家あまた、水に臨んだ岸にひょろひょろとした細くって低い柳があたかも墓へ手向けたもののように果敢なく植わっている。土手は一面の蘆で、折しも風立って来たか....
ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
せんか。――ああ、竜胆を。」 と、ながしめ清しく、 「まあ、嬉しい。あなたもお手向けなすったのね。あの、そしてこの塚のいわれを御存じなんですか。」 翳せる袖....
二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
人と多少の交誼ある文壇諸名家の追憶または感想を乞い、集めて一冊として故人の遺霊に手向けた。その折諸君のまちまちの憶出を補うために故人の一生の輪廓を描いて巻後に附....
二葉亭追録」より 著者:内田魯庵
感したろう乎、ドッチの肩を持ったろう? 多恨の詩人肌から亡朝の末路に薤露の悲歌を手向けたろうが、ツァールの悲惨な運命を哀哭するには余りに深くロマーノフの罪悪史を....